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80、櫛と本心 ページ33

「…ふあぁぁ」




お風呂上がり、ポカポカした体と着ている寝巻きに包まれてあくびが出る。




兄と自分は血が繋がっていない。
つまり本当の兄妹じゃないという事実を聞かされた時は、取り乱した。
けれど、それを伝えてくれたおかげで私も誤解が解けたのだから良かったと思う。




「今日は疲れたなぁ」




再び襲ってくるあくびを噛み殺しながら髪をタオルで拭いているとき、あることに気づいた。




『あ…そういえば櫛がない』




兄は持っているだろうかと思い聞いてみるが




「持ってないな」




「ないのかぁ」




仕方ない、今度買ってこよう。
そう考えていると、任せろ、と国木田が自信有りげに言った。




「まだ俺の異能力を知らないだろう」




確かに敦や太宰、谷崎の異能力については説明してもらったが、兄の異能は知らない。
Aはこくりと頷いた。




すると『理想』と書かれた手帳を取り出し、その頁を一枚破った。
スラスラと頁に何かを書き込むと、




「見てろよ…異能力『独歩吟客』」




その言葉に応えるように、光の文字が兄を包む。
眩しさに目を瞑り、次に開けると…




「わぁ…!す、凄い!」




兄の手の中には櫛が収まっていた。
木造りのもので、彫り込まれている模様が美しい。




「…今まで悲しい思いをさせていた、せめてものお詫びだ」




「ありがとう、お兄ちゃん!」




凄い凄いとはしゃぐAを見て、国木田は呆れたように微笑んだ。








Aの寝息が聞こえるだけの静かな部屋で、国木田は思い出していた。
昔、幼かったAに手紙を貰った日のことを。




『俺はあの時…』




___手紙なんていらない。お前からの手紙なんて欲しくない___




冷たく言い放ってしまったあの言葉が頭の中を埋め尽くす。




『本当は…嬉しかったんだ』




ただ、自分が本当の兄ではないと思うと複雑で。
咄嗟にあんなことを言ってしまった。




血は繋がってなくとも、彼女にとっては一緒に育ってきた兄なのだ。




「これからは、絶対にAを悲しませない」




そう心に誓って、国木田は眠りについた。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 国木田独歩   
作品ジャンル:アニメ
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ぺぽん(プロフ) - めろ。さん» コメントありがとうございます、そう言っていただけて飛び上がるほど嬉しいです!これからも楽しく読んでいただけるように頑張りますね🙌 (2023年1月15日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
めろ。(プロフ) - 国木田くんの夢小説あまり見かけないのでこの作品に出会えて嬉しいです!!この作品大好きなのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!!!! (2023年1月14日 23時) (レス) id: 8e324f8e54 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年12月18日 22時

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