60、暗闇の中で ページ13
目を開けると、そこは真っ暗な空間だった。
「ここは…?」
あまりの静けさに心細さを感じてゆっくりと辺りを見回すけれど、誰もいない。
「誰か、いませんか…?」
発した声は、自分でも驚くほどに小さくか細かった。
その瞬間、真後ろに気配がして勢いよく振り返る。
「やあ、こんばんは」
「…誰、なの」
暗いせいで顔は見えない。
けれど声には聞き覚えがあった。
若くて穏やかな声だ。
まるで______初めて会った時のように。
「…横谷…直哉?」
「大当たり」
心臓がギュッと縮まる。
なんの罪もない幸せな家庭を壊した殺人鬼が、
自分を乗っ取り、兄を殺そうとした人物が、目の前にいる。
「どう、して…貴方は捕まったはずじゃ…」
「一つだけ言っておくよ」
「…」
「君は国木田独歩に捨てられたんだ。
素っ気なくされるのもそのせい。全ては君のことが嫌いだから」
「っ!まだそんなことを言うの?!」
こんな奴に耳を貸す必要はない、早く逃げなければ。
後ずさろうとしたその時、
「ニガサナイ」
地面から無数のナニカがぬうっと伸びて少女のの足に纏わりつく。
「ひっ…!」
それは、手だった。
地獄の底から這い上がってきたかのような闇の手。
Aは体を必死によじる。
しかし無数の手は離れるどころか虫のように湧いて、少女の足に、腰に、首にまで這い上がってきた。
「だっ、誰か!助けて!!」
闇の手が顔を覆いはじめる。
息が荒くなる。
「君は自分の兄に捨てられた」
「…そんな、こと…ない!」
「じゃあ、四年も連絡が取れなかった理由はなんだ?」
「ッ…」
動揺している間にも、闇の手はどんどん体にへばりつく。
息ができない。
「国木田独歩はお前のことを邪魔者としか思ってない。君のことなんて嫌いなんだよ、嫌いなんだ、嫌いなんだよ…
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い…」
脳内に直接響くような声に、Aは耳を塞いで叫んだ。
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ぺぽん(プロフ) - めろ。さん» コメントありがとうございます、そう言っていただけて飛び上がるほど嬉しいです!これからも楽しく読んでいただけるように頑張りますね🙌 (2023年1月15日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
めろ。(プロフ) - 国木田くんの夢小説あまり見かけないのでこの作品に出会えて嬉しいです!!この作品大好きなのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!!!! (2023年1月14日 23時) (レス) id: 8e324f8e54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年12月18日 22時