【文スト】いつも兄がお世話になっております２【国木田】【完結】

58、二つの事件の真相 ページ11

乱歩の解説を簡単に説明すると




《横浜男性自 殺事件》の犯人は横谷直哉で、五人の被害者には共通点があった。




一つ目は彼の父親と同じボクサーだったこと。
二つ目は、子供を二人授かっていたこと。




「この条件から見ても、横谷が犯人だって分かるだろ？
つまりは嫉妬だ、自分と同じ家族構成なのに幸せそうな人間を憎んでいたんだろうな」




酷すぎる…。と誰かが呟いた。




「彼の異能力は『相手の精神を操って思うがままに操作できる』自分が相手の精神に入ることも可能という強力な異能だ。




条件に当てはまる父親五人を一斉に操って遺書を書かせ、同じタイミングで自 殺するように仕向けた。これが《横浜男性自 殺事件》の真相」




社内に沈黙が落ちるが、乱歩は構わず言葉を続ける。
自信たっぷりの声が響く。




「そこからは簡単。
彼が出したヒントは『ニ年前の事件』だ。
《A誘拐》をしてまでおびき寄せたいみたいだったから、国木田に相当な恨みを持つ者だと分かる。




国木田がニ年前に解決した事件で恨みを買いそうなものを探したけど、横谷の父親を誤認逮捕したあの殺人事件しか無かったよ。
そして直哉の父親はボクサーであり、誤認逮捕の後に自 殺している。




ってことで二つ事件の犯人は同一人物だと判明。
あとは“彼の父親が逮捕された場所“に横谷と国木田が居ると判断した訳」




ふふん、と鼻を鳴らす乱歩にAは尋ねた。




「あの、弟を逮捕したというのは…？」




「横谷には誠っていう弟がいるんだけど、国木田を殺害するために裏で協力していたんだよ。その証拠を突きつけて警察に引渡しただけだけー」




「そ、そうなんですね」




Aは深く感心した。
この人はきっと、頭の回転の速さ、感の鋭さが一般人の何倍も優れているのだろう。
……それこそ、異常なほどに。




『一見子供っぽく見えるけど…』




この日Aが初めて、人は見かけによらないな、と実感した瞬間だった。

59、二人だけの会話→←57、意識を失っていた間に

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す