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乙女はまだ早い ページ10

早乙女椿は、何度目かのストーカー被害に悩まされていた。

彼女は、完璧であるが故に人目につきやすく、
悪意ある言葉もよく聞く。

いつであったか、見知らぬ男に路地裏へ連れ込まれそうになった時、

幼馴染みである土岐Aが、椿を助けてくれたのだ。

体格も良く、背も幼馴染みより高かった見知らぬ男を、土岐はあろうことか投げ飛ばし、
自分の手を引いて走り出したのだ。

風のように走る土岐の背中と、繋がれた手を、椿は、頼もしく思った。

そして、いつも一緒に居てくれた兄のようだった幼馴染みを、異性として意識するのに時間はそうかからなかった。

車道側を歩かせないようにしたり、椿が困った時は、一番に駆けつけたり。



土岐Aを、愛しいと思う気持ちが強まり、
この想いを伝えようとした時、

土岐は、椿のもとから離れていった。

はじめて土岐が椿から離れた瞬間だった。
最後に見た土岐の背中は何か寂しさを纏っていた。まるで、触れるなと言うように。


上京し、働き始めた土岐を邪魔してしまうといけないから。と、土岐の母親から貰った連絡先を、土岐への想いと共に引き出しにしまった。


椿がストーカーに遭ったのは、その2年後だった。
薬局から帰る時。時刻は午後八時。

後方から聞こえる足音。
荒くなった息。

途方もない恐怖と、いつかの見知らぬ男が椿の脳裏を掠めた。

震える足を引きずるように帰った椿は、土岐の背中を思いだし、胸が焦がされるように痛んだ。

暖かかった手と、絡まった指の感触が思い出される。

怖い。助けて。寂しい。会いたい。
震える手で引き出しを漁り、土岐の連絡先を見つけ、

スマホの液晶に指を滑らせた。

数秒のコール音の後、一番聞きたかった声が聞こえた。

溢れる涙と、掠れた声で

『…たすけて』

消え入るような自分の声を漏らさず聞き取った土岐に、椿はまた、あの頃の気持ちを思い出したのだった。


『わたしを…殺してAくん…』

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hiroko - すごいですね、、、、面白かったです! (2020年12月30日 8時) (レス) id: 8a3d376cd9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:不鮮明なリンゴ | 作成日時:2020年4月1日 13時

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