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きっかけ〜中村side〜 ページ9

「まだ入って間もないのに端役とはいえ役をもらえるなんて、さすが〔期待の新人〕って感じ?」






なんてタイミングの悪い……

俺は1人廊下の角で頭を抱えた。

見えない位置からチラっとスタジオの方を覗くと、俺に背中を向けて1人立ち尽くすAさんの姿。

あぁ、面倒臭い場面に出くわしたなぁ…。

これからだから女は…。

人に悪態をついている暇があるなら自分を磨く努力をすればいいのに。

そんな事を考えながらAさんが中に入るのを待つ。

聞いていた事を知られるのはちょっとな。
泣きつかれても面倒だし。

まさか初仕事で一緒になるとは。
あまり関わりたくないんだが…。
早く中に入らないかな。


けどいつまで経ってもAさんが中に入ることはなく、ただその場に立ち尽くしているだけだった。




………仕方ないか。

もう5分以上経つし、遅刻は勘弁だ。

俺は意を決して一歩を踏み出す。




「………中、入らないの?」

「っっ!!」

Aさんは弾かれたように俺の方に振り向く。

…あれ、てっきり泣いてるものだと思ったけど。

「っな、中村さん!ど、どうしてここに!?」

その顔には驚きの表情は浮かんでいるが涙はなかった。

「俺も、今日ここだから。仕事。」

言いながらAさんの横を通りすぎ扉に手をかける。

「えっ!?じゃあ…。」


………何も言わないって訳にも、いかないよなぁこれは。

仮にも事務所の後輩だし。

あんな事を言われた後に俺にまで冷たくされて泣きでもされたら、それこそ目覚めが悪い。


「あー…まぁ……気にするなよ。」

「………え?」

当たり障りのない言葉をかけると最初はわからない顔をしていたが、さっきの事だと気づくとみるみる顔を赤くした。

「あ…ありがとうございます。私は大丈夫ですから!」

けどその顔には悲壮感なんてものはなく、挑戦的に笑う彼女がそこにいた。

あまりに予想外の反応に一瞬目を見開くがすぐに喉の奥から、くっと笑いが込み上げてくる。

「え?」

彼女は彼女で俺の反応が意外だったのかキョトンとした顔で俺を見た。

……いい顔すんじゃねーか。

そんな事を思って込み上げる笑いを押さえつつ極めて冷静に反応を返す。

「…いや。いくぞ。気合い入れてけ。」

一声かけて扉を開ける。

「はい!」





返事をした彼女の顔があまりにも嬉しそうで


あまりにいい笑顔で笑うものだから


一瞬



一瞬だけ彼女に目を奪われた。

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いくは(プロフ) - 妄想腐女子さん» コメント嬉しいですー!ありがとうございます!最近滞りがちですが頑張ります(*´ω`*) (2018年6月22日 9時) (レス) id: 31af189ded (このIDを非表示/違反報告)
妄想腐女子 - 面白すぎます!!!声優LOVEにはとっておきですね!!更新、頑張ってください!! (2018年6月22日 0時) (レス) id: a8cadbb43c (このIDを非表示/違反報告)
いくは(プロフ) - 花陽さんありがとうございますー!初コメ超嬉しいです(*´∀`)頑張ります! (2018年5月26日 7時) (レス) id: 31af189ded (このIDを非表示/違反報告)
花陽(プロフ) - すごく面白いです!これからも更新頑張ってくださいね!応援してます! (2018年5月26日 0時) (レス) id: f5d3d09cf4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いくは | 作成日時:2018年5月9日 9時

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