いけない感情〜中村side〜 ページ39
「はぁ……めんどくせぇ。」
仕事も終わって小野さんの家に向かう電車の中、俺は窓の外を眺めながらため息をついた。
何が悲しくて飲めもしないのに飲み会に参加しなくちゃいけないのか。
とは言ってもまだまだ下っぱの俺には先輩命令を断る権利などあるはずもなく。
…家帰ってゲームの続きをしたい。
………今はあいつの顔を見たくない。
いや
見ていられない。
あの時
俺は何であんなに軽々しくAに触れたんだろう。
警報は鳴ってたはずだ。
触っちゃだめだって。
あいつは危険な匂いがするって。
なのに
気がついたらもう手が頭の上に乗ってた。
毎日
毎日毎日
あいつの少しくせのあるふわふわの柔らかい髪の感触が
真っ白だったのに林檎みたいに赤くなっていく肌が
みるみる潤んでいく瞳が
恥ずかしそうに…そのくせすげー嬉しそうな顔で笑うあいつの顔が
うざいくらい頭のなかでリピートされる。
「……くそっ。」
Aの顔を振り払うように無意識に電車のドアのガラス部分におでこを打ち付けた。
ガラス越しに注目を浴びている事に気がつくが、今の俺にはそれを気にする余裕もなかった。
あいつは事務所の後輩で
昔から俺に憧れてて
純粋で
きっと欠片ほども俺の事を恋愛感情なんかでは見ていない。
そして俺も見てはいけなかった。
あいつの良き先輩であるように
胸をはって憧れの存在でいられるように
あいつに負けないように頑張ろうって思ってたのに。
邪な感情が芽生えてしまった。
けどこの感情はAに気づかれてはいけない。
気づいたらあいつはきっと離れていく。
そう思った。
なら俺はAの先輩として今まで通りやっていくだけだ。
事務所の後輩で同業者なんて、面倒臭いだけ。
自分にそう言い聞かせて、俺は電車を降りてAもいる小野さんの家に足を進めた。
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いくは(プロフ) - 妄想腐女子さん» コメント嬉しいですー!ありがとうございます!最近滞りがちですが頑張ります(*´ω`*) (2018年6月22日 9時) (レス) id: 31af189ded (このIDを非表示/違反報告)
妄想腐女子 - 面白すぎます!!!声優LOVEにはとっておきですね!!更新、頑張ってください!! (2018年6月22日 0時) (レス) id: a8cadbb43c (このIDを非表示/違反報告)
いくは(プロフ) - 花陽さんありがとうございますー!初コメ超嬉しいです(*´∀`)頑張ります! (2018年5月26日 7時) (レス) id: 31af189ded (このIDを非表示/違反報告)
花陽(プロフ) - すごく面白いです!これからも更新頑張ってくださいね!応援してます! (2018年5月26日 0時) (レス) id: f5d3d09cf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いくは | 作成日時:2018年5月9日 9時