謝罪 ページ13
廊下の片隅にある自販機。
その前に申し訳程度に置いてあるテーブルと椅子のセット。
その一つに腰を下ろし二人向かい合う。
「………。」
「………。」
「え…え、と。……あ、な、何か飲みますか!?」
このとてつもない緊張感に耐えられずガタっと音を立てて席を立ち自販機に向かう。
「あ、ああ。」
鞄から財布を出してパチンとガマ口を開けると、前からチャリン、と小銭が自販機に吸い込まれる音がした。
「えっ。」
「……後輩に奢ってもらうわけにはいかねぇから。何飲む?」
すぐ近くの頭の上から声がして顔を上げるとポリポリと頭を掻く中村さんの姿。
「あ…いやっ!じゃあ自分の分は自分で払いますから!!」
「いや…自販機でそこまで頑なにならなくても…。いいから。何飲むの?」
半ば呆れ気味に苦笑する中村さんを見て、これ以上突っ込まない方がいいと理解して大人しくお茶をお願いする。
中村さんはペットボトルを2本買うとさっさと椅子に戻って私が座っていた椅子の目の前にお茶を置いた。
「あ、ありがとうございます…。」
自分から誘っといて奢らせるなんて、なんて図々しい…。
「いや…大丈夫だから。話があるんでしょ?座らないの?」
「はっ、はい!」
軽い自己嫌悪に陥っていると中村さんが優しい声で座るように促してくれた。
大人しく座るものの、なんて話し始めればいいのかわからなくてまた沈黙が続く。
「……それで、話って?」
沈黙に耐えかねたのか中村さんから話題を振られる。
「は、はいっ!あ………あの……この間の事……謝りたくて。」
「………この間のこと?」
中村さんは思い当たる節がないのか、1人首を傾ける。
「あ…の、前に会った事、ありませんか…って。」
「……ああ。」
初めて会った時の事を話せば中村さんの眉間に皺がより少しだけ声が低くなる。
その表情を見て、やっぱり私は言ってはいけない事を言っていたんだと悲しくなった。
太ももの上で拳を握り、なんとか勇気を奮い立たせ、
「あのっ!すみませんでした!勘違いだったんです!」
ゴンっっっ!!
「いっ……!た…。」
勢いよく頭を下げてそのままおでこをテーブルに打ち付けた。
「お!おい!?大丈夫か!?」
「は、はい。すみません…。」
恥ずかしいのを我慢して話を進める。
「会った事……なかったんです…。」
「……ぶっ!ぶははは!!」
未だに痛むおでこを抑えて前を向くと、初めて見る中村さんの笑顔がそこにあった。
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いくは(プロフ) - 妄想腐女子さん» コメント嬉しいですー!ありがとうございます!最近滞りがちですが頑張ります(*´ω`*) (2018年6月22日 9時) (レス) id: 31af189ded (このIDを非表示/違反報告)
妄想腐女子 - 面白すぎます!!!声優LOVEにはとっておきですね!!更新、頑張ってください!! (2018年6月22日 0時) (レス) id: a8cadbb43c (このIDを非表示/違反報告)
いくは(プロフ) - 花陽さんありがとうございますー!初コメ超嬉しいです(*´∀`)頑張ります! (2018年5月26日 7時) (レス) id: 31af189ded (このIDを非表示/違反報告)
花陽(プロフ) - すごく面白いです!これからも更新頑張ってくださいね!応援してます! (2018年5月26日 0時) (レス) id: f5d3d09cf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いくは | 作成日時:2018年5月9日 9時