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一番最初に見つけた檻は同じ廊下にあった檻。中には老人が一人。裾の千切れた袴を着てみすぼらしい、見るからに囚われ人然としていた。彼は驚いていた、鉄格子の向こう側に現れたのが二人の子どもである事に。Aは真っ先に唇の前で人差し指を立てた。

「ここの鍵を開ける、その後は誰にも見つからないよう逃げて!」

中也の掌に乗ったピジョンが錠に爪を差し込んでいると、面食らっていた様子の翁はポツリと呟いた。「長生きはするものじゃのう……」

「そうだぜ、爺さん。いい老後送れよ」

「ま、待ってくれ……!」

そのまま先を急ごうと踵を返した二人は思わず、足を止めてしまった。

「儂は足を怪我しておる。でき得るなら君たちと道中共にしたい。代わりに可能な限りの協力を約束しよう」

「はあ?爺さん、散歩じゃねえんだぞ!?」中也は小さく叫んだ。完全にこの老体は呆けている、そう思ったのだ。どうする、とAに目を向けた。彼女は暫くしてから、こう言った。

「わかった、ただし少しでも遅れれば置いて行きます。それでも構わないなら附いて来てください」

「ああ、承知した」

老人が安堵したように微笑む一方で、中也は「マジかよ」と初っ端から先が不安になっていた。対して、Aはまったく別の事を考えていた。

 「お爺さん。貴方、無杖呪文は使えますか?」

「ああ、ある程度は」

「なら開錠呪文(アロホモラ)は?」

「ああ、できるとも」

「それは良かった…なら貴方は魔法生物の閉じ込められた檻を探して開錠してください」

「なるほど、了解した」

中也は話についていけず、「何で魔法生物?此処にいるのかもわかんねえのにか?」と訊ねた。Aはすぐさま答える。

「そうだよ、これは博打だ。でももし魔法生物も此処に閉じ込められているなら、そっちの檻は人の開錠呪文が効くはずだろう?」

「……!そうか、呪文が使えないから人間を閉じ込める檻と違って開錠呪文対策を施されてる可能性が低いってわけか」

そういう事、Aは頷く。

「中也、想定外だったけど二手に分かれよう。私はピジョンと人の捕らえられた檻を開ける」

「わ、わかった。気をつけろよ」

「そちらも」

 中也は老人と共に姿くらましする。Aも内心では、いきなり見知らぬ人と行動を共にさせてしまい中也に悪いと思っていた。だが再三繰り返すようだが今は策に拘れない。二人の無事を祈るしかなかった。

参→←第六章 脱走、逃走、闘争 壱



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printemps - 前回ので完全に山本先生が好きになりました… (2022年2月19日 10時) (レス) @page3 id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)
オムライス(プロフ) - コメント失礼します。物語が面白くて引き込まれるような形で一気読みしてしまいました。続きが気になります。お体に気をつけて。更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2020年5月22日 16時) (レス) id: 8c1b28c023 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サラ | 作成日時:2020年4月2日 23時

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