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寝台に横たわった瞬間、頭の中で坂口安吾と交わした最後の会話が蘇った。

***

 『な_何を莫迦な事を!死にたいのですか!?相手は、あの_』『坂口さん』

私はそれ以上喋る事は許さない、という意味で彼の名を呼んだ。

『先刻も申し上げたように、私は魔法省(貴方がた)を信用していません。お力添え頂かなくても結構なんです』

坂口は理解し難い、と眉間に皺を寄せた。

『…正気ですか?』

『ええ、私の命です。私が責任をとるのが筋というものでは?』

坂口はそれからも何かしら云って説得しようとしていたが…開けかけた口を閉じてしまった。これは私としても意外な展開だった。なんせ私の想像する役人というのは、アンブリッジだとかファッジだとか子どもの言い分に耳など貸さない悪党ばかりだったからである。まあ、確かにアーサー・ウィーズリーのような例もあるし。

『…判りました』

その答えも、私には予想外のものだった。先程の彼の口振りから察するにその身辺警護はもう既に決定事項だったように聞こえたのだが。

『用件はそれだけですね?…雪道にはお気を付けて』

私は笑顔(・・)を忘れずに、森さんと共に客人たちを見送った。

***

 「…」

寝返りを打った。この広い寝台の上では、転げ落ちる事もなかった。

「…一人じゃ、この寝台は大き過ぎるな」

私の独り言は思いの外、自室によく響いた。


____________________


 二〇二六年、一月。横浜駅にて。

「治、早く!列車に乗り遅れるぞ!」

「判ってるよ!」

二人のよく似た少年と少女が、ホームを駆けていた。その先の改札口付近では、眼鏡をかけた同じ年の程の少年が、腕を組んでいる。彼の姿を確認すると、二人の顔が晴れやかなものとなった。

「独歩!」「国木田君!相変わらず眉間の皺が取れてないよ!」

「太宰!誰の所為だと思ってる!新学期早々遅刻する気か!!」

どうやら三人は待ち合わせをしていたようだった。眼鏡の少年はガミガミもう一人の少年を怒鳴りつけながら、少女は微笑みながら改札口を通り抜けて行く。
 _そうして彼らは、常人の想像を遥かに超えた世界へと足を踏み込んだ。


 「それにしても、三人一緒に飛び級確定申告が来るだなんてね」

「そうだな、暫く休んでいた治のところにも来るだなんて」

「まあ、もし俺のところに来て太宰のところに来なかったのなら、流石に納得できなかったところだが」

参→←第三十章 決意と願掛け 壱



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サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます!消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね?だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線?ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです!しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます! (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サラ | 作成日時:2018年9月20日 12時

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