第三十章 決意と願掛け 壱 ページ48
客人の三人が帰る頃には、時計の針が十二の数字を指していた。
「Aちゃん、今日はもう寝た方がいい。疲れたろう？」
森さんは私の身を案じてか、湯浴みすら勧めなかった。そう云われたら、旋毛から足の指の先にまで、どっと疲れが押し寄せて来た。昨日から今日にかけて色々な事が起き過ぎたからだ。
「ありがとうございます。そうさせてもらいます」
私は森さんに低頭し、背を向けた＿のだが、ふと疑問が沸き起こって、振り返った。
「…森さんは、どうして治を引き取ろうと思ったんですか？…�爐△糧↓瓩楼貘痢�何なんですか？」
その質問をした時、彼の…森鴎外の灰色の瞳が、揺れ動いた気がした。
「…とんだ変化じゃないか。以前、君はそれを聞こうともしなかったのに」
「気に障ったのなら謝罪します。でも、ある人物から云われたのです。�犹笋浪燭發靴討い覆ぁＣ里辰討發い覆き瓩函朕佑�無知な事は罪ではないでしょう。知ろうとしない事が罪なのではないか？少なくとも私はそう思うんです。なら、聞こうともしなかった私の行為は誤りだった…今なら、そう思うんです」
佐々城の言葉が、また頭を過る。もし…そんな話をしたって無駄な事だ。そんな機会だって無かった事も知っている。けれど…もし、あの襲撃が起こる前に、彼女の苦悩を聞いていれば。
彼女が死ぬ事もなかったのではないだろうか？？
森さんは黙っていた。只、沈黙しているわけではなくて、真剣な目で私を見据えていた。まるで品定めをしているような目だった。この人は商人の頭だから、尚更そう見えて来た。
「…いい目だ。初めて会った時とは、まるで違う」
「…でしょうね。あの時は凡てに絶望していた。周りを取り巻く何もかもが敵だと思っていたから」
そう、誰からも背を向けて泣いていた、あの時は。でも今は違う。
私は自分の胸にそっと、拳を添えた。
「私はこれから、自分の運命と向き合わなければならない。自分の正しいと思った生き方をしなければならない」
「…君は凡てを、知る気でいるのだね。�牾亳膈瓩覆鼻△箸Δ暴侏茲討い燭里世諭�
…私は今目の前にいる森さんの様子に、驚かなかった。
彼は、一筋の涙を流していた。
「でも、でもね…まだ話すわけには、いかないんだ」
「…貴方には、はぐらかされてばかりいる」
逆に私は笑っていた。どうしてだか、いつも泣いている森さんが…初めて泣いているところを見せてくれた事に、安堵すら感じていたのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます！消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (
レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね？だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線？ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです！しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます！ (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サラ | 作成日時：2018年9月20日 12時
