陸 ページ28
佐々城はもう、教卓の三歩手前というところまで近づいていた。でもそれは＿私たちにとって、却って好都合だった。
バッ！
教卓の右側、佐々城から見て左側から何者かが飛び出して来た。
「ルーモス・マキシマ！」
中也だ。彼が佐々城に突き出した杖の先端からあふれんばかりの閃光が零れ出す。もう左目しか残っていない彼女にこれは最悪の一手だろう。その証拠に残った目を抑えてしまっていた。これでもう彼女は盲目になったも同然だ。…この時を待ってた！
私も痛む片足に鞭打って、教卓から飛び出した。そして佐々城の横っ面に思いっ切り拳を叩きこんでやった。「ぐつ…！」彼女の細身が地面に倒れ込む。
私はその身体に跨って、今度は彼女の首に片手をかけてやった。佐々城が片目を開く頃には、もう渾身の力で彼女の首を絞めていた。片手だけだったからさして苦しくはないだろう。現に佐々城はそれ程苦しそうではなかった。…そんな事はどうでもいい。
私は右手で握り拳を作り、掲げた。佐々城がそれを見てびくりと震えたのを、私は見逃さなかった。
「やっぱりか、これが弱点なんだな？」
私が彼女の目と鼻の先に突き出した拳には＿血が滴っていた。指や手の甲の所々には、皮膚がビリビリと引き裂かれたような痕がある。
「これをお前の口にでも突っ込めば、もうお前は魔女でいられなくなる…違うか？」
佐々城は何も云わなかった。ただ、身体の奥から来る震えを何とか押し殺そうとしているように見えた。私はもう、ほんの少しの慈悲も与えてやらなかった。拳を、正確には血の滴が佐々城の口の中に落ちるよう動かした。
「答えろ。太宰治の覚醒もこれで保証されるな！？」
佐々城はもう一度身体を跳ねさせた…そして、微かに首を上下させた。
それだけ聞ければ、もう十分だった。私は佐々城の首を締める腕の力を、緩めた。でも最後に一言だけ、云ってやった。
「ここに『生ける屍の水薬』が無い事が本当に悔やまれるよ…お前に太宰治が味わった苦しみの千分の一でも味あわせてやれるのに」
佐々城は今日一番の大きさで肩を震わせた。それを見て、私は拍子抜けしてしまった。
先刻まで彼女に対しては命の危機まで感じていたというのに…今では彼女が世界で一番気の毒な生き物に見えた。我ながら自分の心変わりの速さにあっぱれだ。
「太宰！中原！大丈夫か！」
それまでいなかった人物の声がした。私は徐にそちらの方へ視線を移した。
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サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます！消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (
レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね？だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線？ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです！しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます！ (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2018年9月20日 12時
