64話 痛いの痛いの飛んで行け ページ15
『いったぁ...』
今や私の右手首は、はち切れんばかりに腫れ上がり、青黒く変色していた。
痛さのあまり、思わず目に涙が浮かぶ。
このくらい自分でどうにかできると思っていた、数十分前の浅はかな自分を呪いたい。
かと言って、今から医務室に行くというのも、幻のシーカーの名に傷がつく。
私は誰もいないことを確認すると、使っていない教室にそそくさと駆け込んだ。
右手首に杖を当て、思いつく限りの呪文を唱えて、包帯で縛った。
幾分か楽にはなったものの、私の呪文で治せる傷などたかが知れている。
『これでよし...』
カッコつけて無茶をするものではないなと肝に銘じつつ、私はローブに杖をしまった。
「これはこれは」
私はぎくりと後ろを振り返った。
今はあまり聞きたくない、嫌な猫なで声が背後から響いた。
＊
「成績優秀なミスグレーパーはまたもつまらない授業をさぼっておられるようだ」
『セ、セブルス...』
苦虫を潰したような顔の私に、セブルスはどこか呆れたように眉を釣り上げて見せた。
入学の時差を埋めるための特別処置で、以前受けた授業をもう一度受け直すことになっている私は、
成績はもちろん問題もなく、つまらなくなって授業を抜けることがよくあった。
先生たちはそんな私を多めに見てくれていた。
セブルスももちろん例外ではない。
授業を抜けて、フレッドジョージといたずらに勤しむ時もあれば、セブルスの部屋に居座ることもあった。
彼は小言を言いつつも、私を追い出したりはしない。機嫌の悪い時は別だが。
「隅っこでこそこそと…何をしている」
私が咄嗟に右腕を隠したのを、彼は見逃さなかった。
ぐいと右手首を握られて、私は叫び声を上げた。
『い゛っ…！？』
目に涙を浮かべる私を、セブルスはきつく睨みつけた。
彼は包帯の隙間から覗く青黒く腫れた肌に目を移した。
「これは一体どういうことか、説明してもらおう」
私は飛行訓練でネビルを助けたこと、怪我をしたこと、マダムフーチに黙って、そして授業を抜け出してきたことを説明した。
セブルスは深いため息をついた。
「馬鹿者。無茶はすべきでないとすでに学んだはずだが」
そう言うと、彼は私の腕に杖を当て、まるで歌うように呪文を唱えた。
たちまち腫れが引き、鈍い痛みは遠くへ行ってしまうように消えた。
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猫目石(プロフ) - 更新ファイトぉォぉォぉォぉォぉォぉォ！ (2021年12月14日 17時) (
レス) @page17 id: 5676b10c1c (このIDを非表示/違反報告)
s - とっても面白いです！更新楽しみにしてます！頑張ってください！ずっと応援します！！ (2018年8月8日 1時) (レス) id: 84290475d2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 続き楽しみにしてます！ (2018年3月29日 19時) (レス) id: 5960f9db2e (このIDを非表示/違反報告)
二モ(プロフ) - 面白いです！更新頑張ってください！ (2018年3月10日 16時) (レス) id: 2f37a9d847 (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯(プロフ) - 続き楽しみにしてます。とても面白いです (2018年2月12日 19時) (レス) id: ab64c6cb5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イレイ | 作成日時：2018年1月25日 19時
