8話 冗談の裏に ページ8
自分の部屋で荷物を整理した私は、楽しげな声に包まれている談話室を、一人抜け出した。
スリザリンの談話室は嫌いだ。
陰湿でごつごつとした岩の壁と、不気味な緑色のランプが、余計に気持ちを暗くする。
こんな夜中に校内を徘徊していて、見つかったら大惨事だが、私はそんなこともお構いなしに、薄暗い廊下を歩いていた。
私が例のあの人の娘だと聞き、面白がって話しかけてくる生徒はいたが、同室の女子生徒の多くが、私を気味悪がり、近づこうとしなかった。
私は、寮から少し離れた、人気のない階段に腰を下ろした。
ホグワーツはちっとも楽しいところじゃない。
リーマスは人狼で、それを隠すために辛い思いをしたと言っていたけど、それでも彼には、受け入れてくれる友達がいた。
でも、私には―――――
「A」
名前を呼ばれて顔を上げると、そこには、
『フレッド...?』
彼の姿があった。
「...やっと見つけた」
『...私と一緒に罰則、受けたいの?』
私がにやりと笑うと、フレッドは優しく微笑んで言った。
「まぁ、それもあるかもな...本当は、君が心配でジョージと探してたんだけど。あんな噂、気にすることないぜ」
『あんなの全然気にしてない』
私がそういうと、フレッドは困ったように笑った。
「嘘つき」
彼は私の前にしゃがみこみ、その手で私の頰を拭う。
「これでも気にしてないって言える...?」
『えっ...』
自分が泣いていたことに気づかなかった私は、慌てて頰を拭った。
涙で、ローブの袖が濡れる。
『ごめん、私...』
「なんで謝るんだよ」
フレッドに優しい言葉をかけられる度、それが私の心に染み込んで、涙の量は次第に増えていく。
どうしてこんな私に、そんなに優しく微笑んでくれるんだろう。
黙って泣き続ける私を見て、フレッドが再び口を開いた。
「Aとは会ったばっかりだし、俺、こういう時のうまい慰め方なんて知らないけど」
そう言って、彼の大きな手がぎこちなく私の頭を撫でる。
「泣かないで」
私は、涙でぐしゃぐしゃの顔で、フレッドににっこりと笑ってみせた。
『違うの。今のはね、嬉し涙だよ』
私の言葉に、フレッドは「変なの」とつぶやき、安堵のため息を漏らした。
彼の優しい指が、私の髪を耳にそっとかけた。
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空 - 短編集の続編ってもうないんですか?面白いので少し寂しいです笑 (2018年7月8日 22時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
カフェオレ(プロフ) - はじめまして、前作から読んでます!最近は更新がいっぱいで嬉しいです!これからも頑張ってくださいね! (2018年1月8日 21時) (レス) id: 415ee3fd30 (このIDを非表示/違反報告)
イレイ(プロフ) - 侑奈さん» とても嬉しいです!!ありがとうございます、頑張ります! (2017年7月27日 23時) (レス) id: 4b28bb3169 (このIDを非表示/違反報告)
イレイ(プロフ) - 美南さん» ありがとうございます!頑張って更新しますので、これからもよろしくお願いいたします! (2017年7月27日 23時) (レス) id: 4b28bb3169 (このIDを非表示/違反報告)
イレイ(プロフ) - アーヤさん» ありがとうございます!頑張ります! (2017年7月27日 23時) (レス) id: 4b28bb3169 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イレイ | 作成日時:2016年12月20日 21時