4話 瓜二つな少年 ページ4
「気味が悪い」
「あの子が例のあの人の娘よ」
「あの眼帯の下に、呪われた目があるんだって！」
汽車の通路ですれ違う生徒達が、興奮混じりにそう囁く声が聞こえる。
気にしないようにはしていたが、すれ違うたびに聞こえることにうんざりした私は、誰もいないコンパートメントに入って思わず耳を塞いだ。
こんな時、いつも慰めてくれるリーマスもいない。
私は小さく溜息をついた。
わかってはいたが、私に友達が出来ないことは明白だ。
「きっとうまくやれる」「ホグワーツは絶対に楽しいところだ」とリーマスは言うが、私の不安は大きくなるばかりだった。
胸に下げていた、母のヒビの入った懐中時計に視線を落とす。
もし両親が生きていたら、どんな励ましの言葉をかけてくれただろう。
考えに耽っていた私の耳に、微かに声が聞こえた。
「...ぇ...ねぇ、おーい」
『...えっ？』
慌てて耳を塞いでいた手を離す。
顔をあげると真っ先に飛び込んできたのは、燃えるように鮮やかな赤毛だった。
「やっと気づいた」
「なんで耳なんか塞いでたんだ？」
目の前にたたずむ瓜二つの二人の少年は、私を不思議そうに見つめている。
『...えっと』
「俺はフレッド・ウィーズリー」
「俺はジョージ。ジョージ・ウィーズリー」
ジョージと名乗った方が、「俺たち双子なんだ」と言った。
それもそのはず、私の目の前には、全く見分けのつかない瓜二つの顔が並んでいる。
「今年は随分かわいい子が入学するんだな」
フレッドの言葉に、私の顔がさっと赤く染まる。
「それで、君の名前は？」
ジョージが私に聞いた。
『私は、A・グレーパー』
「グレーパーって...あの、ギャリー・グレーパーの娘の？」
「じゃあ君も、例のあの人の呪いを受けたの？」
心に雲がかかったように、どんよりとした気分になった。
この先も、この左目のことをずっと言われ続けるのだろう。
彼らも、私をからかいにきたに違いない。
しかし、フレッドとジョージが私に向ける目は、軽蔑の目ではなかった。
「「かっこいい...！」」
『えっ...？』
二人は目を輝かせてこちらを見ている。
そんなことを言われたのは初めてで、私は拍子抜けしてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 192人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「子世代」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空 - 短編集の続編ってもうないんですか？面白いので少し寂しいです笑 (2018年7月8日 22時) (
レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
カフェオレ(プロフ) - はじめまして、前作から読んでます！最近は更新がいっぱいで嬉しいです！これからも頑張ってくださいね！ (2018年1月8日 21時) (レス) id: 415ee3fd30 (このIDを非表示/違反報告)
イレイ(プロフ) - 侑奈さん» とても嬉しいです！！ありがとうございます、頑張ります！ (2017年7月27日 23時) (レス) id: 4b28bb3169 (このIDを非表示/違反報告)
イレイ(プロフ) - 美南さん» ありがとうございます！頑張って更新しますので、これからもよろしくお願いいたします！ (2017年7月27日 23時) (レス) id: 4b28bb3169 (このIDを非表示/違反報告)
イレイ(プロフ) - アーヤさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2017年7月27日 23時) (レス) id: 4b28bb3169 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イレイ | 作成日時：2016年12月20日 21時
