実験8回目 ページ8
それから気が落ち着いたところでメリヤスに妻が死んだこと、自分とその娘であるアリサやメリヤスも吸血鬼であることを話した。メリヤスは自身が吸血鬼であることに驚いたらしいがまだ本気にはしていないようだった。なら吸ってみるといい、俺はそう言った。未成年者に酒やタバコを勧めるようなことにどこか似ている。駄目なことなのに。吸血鬼は一度血を吸ったらもう戻れない。メリヤスは嗚咽混じりにその血を飲んだ。
「これで共犯だ」
苦い笑顔になる。俺は今日、娘を吸血鬼の道に突き落とした。
ベランダで煙草を吸う。一度息を止め、真っ暗闇の夜に吐く。
「カンナ、吸いすぎよ」
「メリヤス、そのカンナっての…、もう大丈夫だから」
パパなんてクラスメイトでも呼ぶ子いないし、あたしの勝手に呼ばせてよ、それに一箱も吸ってたら大丈夫なんて言えないわなんてメリヤスは言いながら隣に来た。反抗期なんだか親思いの優しい奴なんだか。
「…アリサには、言ったの」
「言ったさ、アンネが死んだこと、吸血鬼のこと…」
アリサは思ったよりも動揺しなかった。いや、顔にでていないだけできっと相当動揺しているに違いない。吸血鬼の件もすんなり受け止めた。もしかしたら、気づいていたのかもしれない。
…アンネの死体は何処か遠い所に隠そう。殺してはいないが、噛み跡を怪しまれる。そもそも世間一般が吸血鬼の存在を認めるわけがない。
風がメリヤスの長い髪を撫でる。娘ということを差し引いても中々に美人だ。月の光が彼女を淡く照らした。
「!?お前、その左目…」
本来黄色の両目だったが左目が薄紫色に変色していた。妻と同じ瞳の色だ。恐らく血を吸った原因によるものだろうか。妻が残した形見だ、と思った。
「ああ、気づいたらこうなってたの。…カンナ、また泣いてるの？…分かったよ、この瞳は今日だけ独占させてあげる。カンナが眠りにつくまで見守るわ」
どっちが子供なんだか、なんて笑ったけど内心ほっとした。誰かの傍に居たかった。今日だけは子供に返りたい、そんな気分だった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーアルファベット
X
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りな(プロフ) - 書き人知らずさん» ありがとうございます！そう言われると励みになります！これからも更新頑張ります！ (2018年5月19日 22時) (
レス) id: 00593af5f9 (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - pixivsketchから飛んできました！拙い文なんかじゃないですよ。すごく面白いです。こちらでもpixivsketchでも絵や小説が更新されるのを楽しみにしていますね。 (2018年5月19日 22時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - イメージソングは「不完全な処遇」でお送りします。(黙れ) (2018年5月9日 20時) (レス) id: 00593af5f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りな | 作成日時：2018年5月9日 18時
