実験3回目 ページ3
どさ、と鈍い音がした。『獲物』の狩りは終了したらしい。その目は光彩を失い、虚無を見つめていた。死んでいる。
「それにしてもお父さんさ、よくこんな情報をみつけたもんだよね」
死体を道端から人目のつかない所まで引きずりながら言う。
「ああ、まあ新聞記者やっているからな。情報なら有り余ってるさ」
と父はいたずらっぽく笑った。夜は包帯をはずすらしく、闇夜に光る黄色の目を細める。そんなにも簡単に情報が盗み出せる職場なのか…、と思ったがきっと他の情報網もあるのだろう。
「カンナ、そんなの職場でばれたらどうするの?」
メリヤスは父のことを名で呼ぶ。理由はなんとなく、だそうだ。1種の反抗期のようなものか。
「数えきれないほど盗んでいるからなあ。そうだな、牢屋で一生酒を飲んでいるか、家でてるてる坊主にでもなってるかな、なんつって」
あんたらしいわ、と言うメリヤスを横にがはははと父は笑っているが割と笑えた冗談ではないぞ、これは。そもそも世間一般が私達が吸血鬼だなんて________誰が信じられるのか。
「さぁさぁ、食事の時間だ。冷めないうちに血を吸おうか」
「この『抜け殻』、処理はカンナに任せるわ」
メリヤスは口のまわりに付いた深紅の血をハンカチで拭きながら言った。
「おう、任せとけ。お前達は先に人目につかないように気をつけて帰れ。もしあやしまれたら迷わず殺せ、いいな」
父いわく犯罪等の証拠隠滅は1人でやったほうがいいらしい。後に新聞等で嘘情報を扇動するのだろう。嘘の情報を自信満々に垂れ流すコツは国民が阿呆であることだ、その方が騙しやすいから、と父が過去に語っていたことを思い出す。人を気安く騙し、殺す。狡猾な男だ。私もメリヤスももう人を殺すのに躊躇いはない。慣れてはいけないと頭の片隅には思いつつも、私は、この家族は、もう随分と人離れしていた。
メリヤスがふ、と息を吐いて帰ろうと顔で訴えた。彼女が完全に吸血鬼となったのはいつだったのだろう。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーアルファベット
X
2人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りな(プロフ) - 書き人知らずさん» ありがとうございます!そう言われると励みになります!これからも更新頑張ります! (2018年5月19日 22時) (レス) id: 00593af5f9 (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - pixivsketchから飛んできました!拙い文なんかじゃないですよ。すごく面白いです。こちらでもpixivsketchでも絵や小説が更新されるのを楽しみにしていますね。 (2018年5月19日 22時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - イメージソングは「不完全な処遇」でお送りします。(黙れ) (2018年5月9日 20時) (レス) id: 00593af5f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りな | 作成日時:2018年5月9日 18時