エイトの籠の鳥3 (ページ26)

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黄side

仕事終わって携帯を見ると、
章ちゃんから着信履歴。

Aが俺んとこに頼んだ荷物を持って戻って来おへんかったことと、
章ちゃんからかかってきた履歴の時間から考えて、
2人で合流してどっかにおるんやろうなぁって思った。

かけ直すと数回のコール音の後、
章ちゃんが出た。

「…亮？」

「おん、今仕事終わってん。
A、一緒におんねやろ？
どこにおるん？荷物取りに行くわ。」

「…俺んち。」

「そっか。じゃこれから向かうわ。」

「…亮。」

「何？」

「俺…、
俺、Aに…

震える章ちゃんの言葉を聞いて慌ててタクシーに乗り込んだ。

耳に残る章ちゃんの声。

『Aが知らん男に抱かれててさ。
俺、頭に血が上ってもうて、

そんで、
そんで…乱暴、してもう、た…』

着いてすぐ章ちゃんちのインターホンを鳴らすと小さく開いたドア。

うな垂れたままの章ちゃんと共に中に入った。

灯りがついていない寝室のベッドに眠っている彼女。

カーテンの隙間から漏れる月明かりに照らされたその顔は、ひどく憔悴しているように見えた。

「…Aんこと考えんで、かなり無理させてもうて…

抱いてる途中で気い失って、
そのままずっと寝とる…」

Aの身体に掛かっていた薄手の布団をそっと剥ぐと、薄明かりでもわかるくらい全身に点々と付いた紅い鬱血痕。

それに腕や手首には拘束された痕があった。

静かに上下する彼女の胸

静かな呼吸音

布団を戻し、俺はそっとAの額を撫でた。

「…なんで？

なんでこんなことしたん？」

呟くように発した俺の声は、章ちゃんの耳に届いたんやろうか。

章ちゃんからの返答はない。

「なんでや⁉」

後ろを振り向きざまにもう一度発した声は、
自分が思うていたより大きかった。

ビクっと震えた章ちゃんの肩。
俯いたままで表情がわからへん。

しばらくの沈黙の後、章ちゃんは口を開いた。

「俺、我慢してん。

Aに触れたい、抱きたい…

Aが戻ってからずっと、ずっと我慢してん。」

「そんなん、みんな一緒やん!!」

「そうやけど、あんな知らん奴になんでAを取られなあかんの？

Aやって、抱き締められとんのに、抵抗、せんで…」

そうや…

章ちゃん責める前に、

その話、

ちゃんと聞かなあかんやん。