ウラバナシ ページ48
もう夏の終わりだがまだ秋に家督を譲る気はないらしい。結構遅くなってしまったと思っていたけど窓の外には燃える夕陽がはっきり見えた。
「ねえ総統？」
「なんだ。」
帰りの電車に揺られながら隣にいる総統を見上げる。
「あのさ、どうして今日あの時助けてくれたの？」
あの時、というのは学ランの人に私が引っ張られた時のこと。
「手貸さないって言ったのに、どうして突然───」
「……なんかムカついたから。」
「は？」
「いや、だから、知らんやつがA抱えたの見て、イラっとした。」
「……………………何言ってんの？」
まるで予想していなかった答えに思わず真面目にもう一度聞き返した。
隣の奴は反対側の手すりに肘をついてそこに顔を乗せているため顔がよく見えない。
すると総統はくるりと振り返り、不服そうな顔で私の鼻先に向かって指を指した。
「俺がくだらねー小競り合いのせいでお前を抱けねえのに何知らん男に抱かれてんだ馬鹿！！」
「───っ！」
恥ずかしさが一気に襲ってきて言葉に詰まった。
どうしよう、なんか、なんか言わなきゃ……！
「はっ、はぁ！？小競り合い始めたのグルちゃんなんやから、そ、そのくらい我慢したらどうなん！」
言葉に困るとやっぱりこういう言い方になってしまう。ああこういうとこが天邪鬼って言われるんだ。
顔に集まっていく熱はこの軽口でちゃんと誤魔化せているのだろうか。
「しゃーねーだろ！気づいたら手が出てたんだよ！」
総統はそれだけ言ってまたそっぽを向いた。
助かった。しばらくこっちは向かないでね。
沈黙の中を心地よい風が駆け抜けて総統の髪を揺らす。
髪の間から見えた耳を夕陽が真っ赤に照らしていた。
知ってるよ、天邪鬼はお互い様。
「ふふっ、ばーか。」
総統は横目で私のことを見た後、私の髪の毛を掬って耳を出させた。
「……うっせ。」
耳、出さないでよ、恥ずかしいなあ。
私は隣にいる総統に耳を押しつけるように寄っかかった。
「……耳、隠すためだから。」
「わかったわかった。おやすみ天邪鬼。」
「こちらこそおやすみ天邪鬼。」
瞳を閉じても瞼の裏に真っ赤な総統が焼き付いている。
きっと自分も同じ色をしてる。
そんなことを思いながら甘い香りに包まれて眠りに落ちた。
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雛菊(プロフ) - 美桜さん» 通知に気づかず返信が遅れてしまい大変申し訳ありません！2ヶ月以上も前に……（汗）読んで頂きありがとうございます！計算高いトントンはめちゃくちゃ気に入ってるので嬉しいです！ (2017年5月15日 1時) (
レス) id: c858a49007 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - ヤバいヤバいグルさんも超格好良すぎだけど、トンさんの計算高い感じも格好良すぎぃ！ (2017年3月4日 8時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - 酒呑童子さん» あああどうもありがとうございますうう！！ (2016年11月28日 13時) (レス) id: 6d4fabdf41 (このIDを非表示/違反報告)
酒呑童子 - お化け屋敷のお話がすごく好きすぎて何回もハイルグルッペンしそうになりました...！これからも頑張ってください！ (2016年11月28日 0時) (レス) id: 31dd048566 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - テル＠コクさん» おおおここにまた我々の忠実な信徒がひとり！ありがたいお言葉です！！がんばります〜〜 (2016年11月27日 9時) (レス) id: 6d4fabdf41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛菊
| 作成日時：2016年8月26日 23時
