↑【Gside】 ページ20
「あー……なんで指なんか切っちまったんだ俺……」
そんなことを言いながら切らないほうが良かったかと言われると素直に頷けない自分がいるのが情けない。
左手の親指からは相変わらず血が滲んできていた。
どくん
ーーーーーまずい。
濡れてきらきらと光る第一関節を見た瞬間、落ち着きを取り戻したはずの心臓がまた跳ね上がった。
咥えられた瞬間の指に舌が這う感触がリフレクトする。
温かくて柔らかくて湿っぽいものに指が包まれてよからぬ思いが頭をよぎった。
今まで積み上げてきたものが崩れると直感して咄嗟に指を動かしたことも裏目に出るだけ。
逃げようとする指に対して吸い付いてきた舌としめつけてきた口は自分を限界まで煽るのに十分すぎるぐらいだった。
Aの言葉を遮って本能を振り払うかのように力任せにAの肩を押して自分から引き剥がしたが顔を合わせることはできなかった。
顔なんて見たら、我慢できん。
きっと抱きしめて、食いついて、貪り尽くしてしまう。
ああ、
味わいたい。
侵食したい。
Aの奥まで俺でーーーーーーーーーーー
どくん、
その想像が頭に浮かんだ瞬間、
まるで沸騰でもしてるんじゃないかと思うぐらい騒がしい血液を心臓が全身に回した。
「くそっ！！！」
髪の毛をぐしゃぐしゃと引っかき回してしゃがみ込んだ。
「どうして男っつーもんはこう単純なんだよ……！」
体温も、心臓も、全てがAが欲しいと叫んでいる。何よりも下腹部に集まった熱が全てを物語っていた。
頭を冷やすため、理性を取り戻すためにまずは顔を洗ったが鏡に映る自分の目はそれこそ狼のようだった。
欲求不満の塊やないから思ってるほど辛くない、なんてよう言えたな、お前。
高ぶった気持ちのままAから貰った絆創膏を取り出して見つめる。
そうすると不思議と、いや、確信はあったのだが気持ちは落ち着いていった。
澄み切った善意に心を洗い流されているような気分だった。
ーーーーお前を、お前だけは汚す訳にはいかん。
「ーーーーーよし。」
俺のことを戸惑わせるのも落ち着かせるのもお手の物。それでこそ俺が見初めた女だA。
俺は親指に巻かれた絆創膏を見た。
「……全部終わったら覚えとけよあいつ！」
自分の左手の親指を軽く甘噛みしてキッチンへ足を向けた。
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雛菊(プロフ) - 美桜さん» 通知に気づかず返信が遅れてしまい大変申し訳ありません！2ヶ月以上も前に……（汗）読んで頂きありがとうございます！計算高いトントンはめちゃくちゃ気に入ってるので嬉しいです！ (2017年5月15日 1時) (
レス) id: c858a49007 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - ヤバいヤバいグルさんも超格好良すぎだけど、トンさんの計算高い感じも格好良すぎぃ！ (2017年3月4日 8時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - 酒呑童子さん» あああどうもありがとうございますうう！！ (2016年11月28日 13時) (レス) id: 6d4fabdf41 (このIDを非表示/違反報告)
酒呑童子 - お化け屋敷のお話がすごく好きすぎて何回もハイルグルッペンしそうになりました...！これからも頑張ってください！ (2016年11月28日 0時) (レス) id: 31dd048566 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - テル＠コクさん» おおおここにまた我々の忠実な信徒がひとり！ありがたいお言葉です！！がんばります〜〜 (2016年11月27日 9時) (レス) id: 6d4fabdf41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛菊
| 作成日時：2016年8月26日 23時
