【d】ぎすmemoGS 5thシーズン【中編番外】 (ページ8)

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「大先生に呼び出されたと思ったらグルちゃんが一人でここに寝てたの」
「あっんのやろう……！」

すぐに拳を握りしめたあたり思い当たる節があるんだろう。こういう場合は大抵大先生が全面的に悪い。
こめかみをヒクつかせながらスマホを取り出した彼はLINEを開き、タンタン音をさせながら誰かにメッセージを送り始めた。口に出すのも恐ろしいような物騒な単語が見えた気がするし絶対気のせいじゃない。

「でも珍しいね酔い潰れるなんて」

と言ったところでお冷が届いた。
記憶している限りではこいつは酒に強かったはずだ。前回みんなで飲んだ時も堂々の一人勝ち。

「俺が酔いつぶれるわけねえだろ。あの野郎俺の携帯してる睡眠薬勝手に使いやがった」
「えげつねえ」
「やろ？大先生のくせに調子乗りやがって。絶対しばいたる」

下手打ったら命を落としかねないほどのイタズラなのに恨み節を言うグルちゃんはなんだか嬉しそうに見えた。性格も変わってないけど、何より関係性が変わっていないことに嬉しさを感じる。

「ねえ、ついでに私とも飲んでくれない？」

お酒のメニューで顔の下半分を隠しながらいたずらっぽく微笑んだ。グルちゃんはそんな私のおねだりを予想していたかのようにため息をつく。グルちゃん流で言う、クソでかため息ってやつ。

「良いかしら？」
「好きにしたらええんちゃう」
「奢って欲しいな～って」
「ふざけんな」
「ね～、だめ？グルッペンくん」
「ッゲホっ！おっまえ、その声どっから出てんねん！」

所謂猫なで声というやつで首を傾げたらグルちゃんがウブみたいな反応で応えてくれた。こりゃおもしろい。女ってのは技の１つぐらい身につけてんだってことを教えてといてやんないとな。

「やっぱり終電前に帰んなきゃ、だめ？」
「わかった！奢ったるから！奢ったるからそれやめろ！」
「よっしゃきたウーロンハイ、いやチューハイがいい！おにーさんチューハイ１つ！」
「は～…………」
「あ、クソでかため息」
「誰のせいやねん」
「まーまー、」

カランと、まだチューハイが来ていないのでお冷で乾杯。手を額に当てて疲れ切った顔を浮かべながら、グルッペンはジョッキだけ差し出してきた。

「グルちゃんも私と二人きりで飲みたかったんでしょうに。大先生気がきく～」
「やかましいねん」
「どうする？高校の時みたいにヨリ戻しちゃう？」
「んなこと言うてると終電で返さねえからな」
「うわっ、ちょっとドキッとした」