【d】ぎすmemoGS 5thシーズン【中編番外】 (ページ6)

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「顔、」
「ん」

呼び声に応えて顔を向けると当然のようにキスが降ってきた。女性顔負けの柔らかい唇が私の唇に触れる。角度を変えて何度も優しく落とされて頭の中が溶けてしまいそうだった。

リップクリームをつけてるわけでもないのにどうしてこんなにやわらかくて気持ちいい唇をしているんだろう。食べてみたい。

ぼーっとした頭でそんなことを考えていたらいつのまにか離れていた総統の唇。視界にはくすりと微笑む総統。めったにしないけど、優しい顔もちゃんと似合うんだなぁこの人は。

「今晩はそういう気分か？」
「……べつにそういうわけじゃないんだけど、ただ好きってわれてないなってだけで」
「顔はそうは言ってないがな」
「なにそのありがちな台詞」
「こんな状態になられると俺もそれなりに期待するだろ。それに、」

総統は私の口の端をぐいっと親指で拭って言った。

「その様子だとお前も、期待してただろう?」

先ほどまで湿っていた部分が外気にさらされてひやりと冷える。対して、妖艶なその瞳に射抜かれた私の体はお腹のあたりから一気に昂ぶった。
彼の瞳にもチラチラと熱が見え始める。この先に何が待っているかはお互いにわかっているつもりだ。初めましてというわけでもない。

それでも、ことに及ぶ前のこの時間が、一番熱くて甘くて、何度体を重ねても初心でいられるような時間だから。

「ねえ、私のこと好き?」

らしくもない台詞をらしくもなく首を傾げて。
私がどれほどの羞恥心を押さえ込んでこんなことをしているのか、総統はわかってるはずなのに。

「ああ」

彼はそれしか言わずに、誤魔化すように私に口付けた。
今夜も今夜とて、きっと彼は意地悪なんだろう。
彼から好きという言葉をもらえる日はまだまだ当分先のようだ。