【d】ぎすmemoGS 5thシーズン【中編番外】 (ページ5)

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【gr】ずるい人ページ5

「ねえ総統。私総統にちゃんと告られてない」

お気に入りのぬいぐるみを抱えてパジャマ姿でそう言うと、彼は顔を起こして私と目を合わせた。
そしていまいち掴めないと言うように瞬きを一つ。

「付き合おうしか言ってくれてない」
「……なるほどな、そういうことか」

総統は目を伏せて机上の本に手をやると、片手だけで器用に栞を挟んだ。
人差し指で本を押さえてすらりとした中指と薬指を本の隙間に滑り込ませる。手を動かしながらも喋ることはやめず「確かに思い返してみれば」とか「ここ最近」とか訥々と言葉を紡ぐ。けれどもそんな言葉はほとんど耳に入ってこなくて私はただただ彼の姿に見惚れていた。

足を組み、頬杖をつき、手慰みに栞の紐をもてあそぶ姿が格好良くて、ああやっぱり、私は、

「好き」

総統の言葉の全てを遮ってそう強く言うと、彼は頬杖からずり落ちた後に「お前話なんも聞いとらんかったやろ！」と眉を下げて笑った。
ふと出てきた関西弁にすら胸がきゅっとする。

「なんなん、どうしたん今日は。やけに素直やな」

ふっと顔を綻ばせる総統はちょっと機嫌がよさそうに見えた。珍しく素直な私とおんなじね。
私が「ちょっとね」と曖昧にごまかすと総統は「いいぞ」とソファの上で軽く両手を広げてくれた。だから待ってましたと言わんばかりに彼の胸に飛び込んで体を預けた。

肌と肌が薄い布一枚越しに触れ合う。
心臓の音が聞こえる。
ほわほわと浮いた心地よさに包まれている。
この甘ったるい感覚は、多分。