【d】ぎすmemoGS 5thシーズン【中編番外】 (ページ4)

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「……お前、なんか入れた？」
「へ？」
「体なんとなく熱いんやけど。酒、とはちゃうわこれ」

……は？いや、確かに入ってるけど、

「それに、」

椅子から立ち上がったトントンはネクタイの付け根に手をかけながら、一歩こちらへ近づいた。

「────正直、ムラっとする」

即効性なんて、聞いてないです。

「付き合え」
「うそ、そんな急に、ちょっ」

軽く肩を押されてドサッとベッドに倒れた。

「妙なもん仕込んどいてそんな気ちゃいますはあらへんやろA、な？」
「いや、それは、たしかにそうなんだけ、ど」

鼻と鼻が触れ合うほどの距離からトントンの台詞が降ってくる。ひとことひとことを紡ぐ唇の動きが、だんだんと迫る瞳が、強くなるチョコレートの香りが、彼はキスを求めているんだという事実を伝えてきた。

「んむっ」

突然押し付けられた唇。
抉じ開けるように入ってきた舌に、強張っていた私の体がまるで観念したかのように緩んでいく。
大先生が言っていた独特の甘い香りがふわっと軽く鼻に抜けた。
あぁ私もあれを口にしちゃったのか。私も今のトントンみたいになるのかな。既にキスでどろどろに溶けたような脳をしてるんだから今更薬なんてなくたって、なんてぼんやり考えていた時。

私の舌の上に冷たい塊が乗せられた。

「────なあ、A。お前性染色体って知っとる？」

軽いリップ音をさせて離れた唇を見ていたらトントンが訳のわからない台詞を言ってきた。細められた瞳に下の方からゾクリと疼く。

────口の中のこれ、チョコレート……？

「人間の細胞に48ある染色体の中で、うち2ペアは性別に関わる性染色体で出来てんねん。男を指定するのはヘテロ接合体XY、女を指定するのはXX。血友病なんかが男にしか表れへんのもこの関係でな、男しか持たないXYペアの染色体のうち母親遺伝のX染色体が血友病を患っていた場合に────って、そんなんどうでもええって顔やな？XX」

XXって、私のこと……？
突如饒舌になった彼に戸惑うばかり。話を追いかけようにも何故か頭が回らない。体はだんだんと熱を増して息が荒くなっていく。どう考えても口移しの薬程度の効果じゃない。
なんなの、これ、
なんでトントンは、いきなり、そんな余裕に、まるで効いてないみたいに、

「────商品名“xxx”の由来は、『XX -女- だけを×す』なんやで？Aちゃん」

あぁしてやられた、と、
そう思うよりも先にトントンの妖艶な笑みに堕ちていた。