心中系浮気症の恋人、予約済です

見たいけれども ページ30

暫くして、国木田さんから電話が掛かって来た。
『石原。敦が拐われたと云う貨物自動車(トラック)の所有者に、谷崎が輸送先を聞きに行った。太宰の方を頼む』
「判りました」
漸く使いなれてきた携帯電話をスカートのポケットにいれる。

路地裏を通り過ぎる。
通り過ぎ…んん？

……路地裏に携帯見乍らにやにやしてる太宰さんが居た。

「……何してるんですか」
「嗚呼、Aちゃん。先刻ポートマフィアに捕縛された処を抜け出して来たのだよ」
「はぁ!?」

えっ、黒社会最強の、えっ。

パニックに陥る私に太宰さんは続ける。
「其処で愉快な動画を撮影して来てね。見る？敵幹部が御嬢様口調で捨て台詞吐いてる処」
「其の方の名誉のためにお断りしておきます。」
……本当何してたんだ此の人。片手に資料を持っているのを見ると、大方情報を手にいれるため潜入したのだろうが。其れにしても、

「心配しました、し…………仕事してくださいね帰ったら‼」
「ええ？私サボりたいのだけれど」

他愛無い会話をしながら、太宰さんを探偵社まで引っ張る。

.


……「彼」の名前を、呼んでしまう処だった。

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