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第9話 ページ9

*


だから気にしないで、と笑ってみせるけど
上手く笑えていなかったのか
神谷くんは困った顔をしたままで
だけど繋がれた手には力が入る。



「……俺もごめん」

「へ?」



まさか謝られると思っていなくて
思わず気の抜けた声が漏れてしまう。



「Aちゃんが嫌だと思うことは
したくねぇと思ってんのに
Aちゃんが言いたくねぇのに
無理に言わせようするのは違うよな」



言いながら神谷くんは
決まりが悪そうに後頭部を掻いた。


違うのに。

私は神谷くんに嫌なことされてないよ。

寧ろ、こんなに気遣ってくれてる神谷くんを
私の無神経な言葉で
嫌な気分にさせてしまいそうになったのに。


だけどやっぱり正直に言えなくて
もしも言ってしまえば
嫌われてしまうんじゃないかと
怖くて何も言えずに俯く私に

神谷くんは優しく笑って
「行こうか」と手を引いた。



「Aちゃんは普段コーヒー飲む?」

「ううん、ちょっと苦手。
ミルクが8割くらいのコーヒー牛乳なら」

「それコーヒー牛乳っつーより
コーヒー風味の牛乳じゃん」



先ほどまでの微妙な空気を飛ばすように
話題を変えて、私の返事に笑う神谷くん。

そんな神谷くんに甘えて
私は手を引かれるままついて行った。




そうして着いた先は
緑に囲まれたアンティーク調の
お洒落な外観の建物。

外の木陰にテラス席も設置されていて
そこにはワンちゃん連れの
二人のご婦人が座っていた。


お店の扉を開けるとリンリン…と音が鳴る。
もうピークは過ぎていたようで
見渡すと席はまばらに空いていた。

店内の本棚には様々なジャンルの本置いていて
落ち着いた雰囲気のブックカフェのようだ。



「いらっしゃいませ、2名様ですね。
こちらの席へどうぞ」


店員さんに案内されたのは
目の前の窓から手入れの行き届いた
綺麗な庭の景色が見えるカウンター席で
神谷くんと横に並んで座る。



さっきのお店はテーブルを挟んだ
向かいだったから
目は合いやすくて、でも距離は少しあった。


だけど隣に座れば距離はより近くなって
くっついているわけでもないのに
私のすぐ右に座る彼の体温までも
伝わってきそうで心臓はバクバク煩いし
身体の右側だけが熱くなってくるような、
そんな気までしてくる。



「神谷くんもこういう所来るんだね」

「意外?」

「ちょっとだけ…」



教室かグラウンドにいる神谷くんしか
知らなかったせいか、
彼がこういったカフェを知っているのに
驚きを隠せなかっただけ。

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設定タグ:ダイヤのA , 神谷カルロス俊樹   
作品ジャンル:恋愛
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もっちー(プロフ) - 続きが楽しみです!!更新待ってます🙌💖💖 (8月27日 2時) (レス) id: 28f73aa9c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無し52551号(プロフ) - 続きが気になっています! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 990a644328 (このIDを非表示/違反報告)
ポン酢(プロフ) - 何回も読み返して、いっぱいときめかせてもらってます!!更新たのしみにしてます! (2017年12月10日 21時) (レス) id: 1aaa9be303 (このIDを非表示/違反報告)
ユミヤミ - 更新お願いします (2017年8月27日 11時) (レス) id: f8c960a3cf (このIDを非表示/違反報告)
れい - 待ってました!更新頑張ってください (2017年8月22日 23時) (レス) id: 78b913d76d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作成日時:2017年3月2日 17時

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