平凡な暮らしをしていたら、いきなり異世界に飛ばされました。【異世界能力系】 (ページ18)

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＊18話ページ18

はぁ…。なんでだ…なんでこうなった…。

嫌だよおおおおおっ。ぶりっこの隣だなんて…!

そんな事を考えていると、話しかけてきた。

「ぁ、えぇっとぉ、お名前、何て読むのー?」

漢字が読みにくいのはわかる。

名字で呼べばいいじゃないか。偽名でも教えてやろうかと迷い、結局バレると嫌なので、本名にした。

『…ふじさきはらる。』

漢字だと藤咲羽瀬涙か。
こりゃ、読めんわな、と少し頷く。

「へぇ、はらるって読むんだあ。はせるかと思ったあ」

きゃはは、とその子は笑う。

失礼すぎんか!?一瞬白目をむきそうになった。

最後の一言いらないだろ、とその子の発する言葉ひとつひとつに文句をつけていく。

そこで気がついた。

あれ、この子の名前聞いてない。

名前なんて知らなくていいんだけど。

聞いておいた方が得だと思う。勇気を出して聞いてみよう。

『ね、』

「んー?」

『名前、何。』

最低限しか言葉を発していない。

我ながら最強だと思った。

「あぁ!名前ねー!あはは、私ったら言うの忘れてたー!」

いいから早く教えろください。

あまり関わりたくないんだ。

「えーっとね、楠藍瑠って言うのー!あいるって呼んでね」

文末に星が見えたのは、はたして私だけだろうか。

あいる…あいるねぇ…。

いや、何もないけど。ピンクの髪なのに青っぽい名前か。

もうやることはやった、と、私はもう話しかけないでオーラをバンバン出して外を眺めた。

前髪の隙間から見える景色。

この世界にはいつも悪口を言う家族も、何もかも押し付けるような大人もいない。

ぶりっこはいるけど。

案外、住みやすいのかもしれない。

元の世界に戻る方法なんて知らないから戻れないけど、戻らなくてもいいかなと少し思う。

そよ風がふく。急いで手で前髪を押さえる。

あいるにバレたら人一倍厄介だ。

なんて面倒な事がたくさんあるんだ、私は。

手の甲の文字も、目も、隠し通さなければいけない。

『はあ…』

無意識にため息が出る。
それは誰にも聞こえることなく、平凡な空気に溶けていく。

とりあえず、どうでもいいから早く放課後になってくれないか。

この隣の悪夢から抜け出したい…。