Episode37* ページ7
『……そんな試合しなくていいのに。』
貴利名と歩く帰り道。
私はぽつりと一言を零した。
氷浦｢いいや、やるさ。
こればかりは野坂に譲れないんだよ。｣
貴利名の握っていた手の力が少し強くなった。
貴利名を見上げると真剣な顔つきだった。
『でもさっき…
貴利名が来てくれた時、ほんとに嬉しかった。
貴利名…ありがとう。』
強く握られた手に応えるように、
同じように握り返す。
たちまち貴利名の表情も柔らかくなったように感じられる。
そしてそのまま静かに口を開いた。
氷浦｢今日は急遽部活が無くなったから、
たまたま駆けつけることが出来た。
でも、今度また同じようなことになったら…
と思うと俺は居ても立ってもいられなくなるだろう。
…野坂も本気だ。
このまま曖昧に終わらせたくはない。
俺はAを守りたいから。｣
貴利名の一言一言から、
強い思いが伝わってくる。
私は立ち止まり、
貴利名の正面に立ち、まっすぐ見つめた。
『私は絶対揺らいだりしない。
私が好きなのは……貴利名だけだから。
今も、これからもずっと！』
急な私の行動に貴利名は驚いているのか、
目を丸く見開いていたが、
すぐに私を優しく抱きしめた。
私の行動に引き続き、
貴利名の行動にも驚きが隠せなかった。
氷浦｢急にそんな可愛いこと言わないでくれる？
……反応に困る。｣
貴利名に耳元で囁かれ、
頬はたちまち熱を帯びる。
私は心臓のドキドキが収まらなかった。
抱きしめられながら、貴利名の横顔を見ると、
耳まで赤くなっていた。
『貴利名、かわいいね。』
思ったことがそのまま口に出てしまっていた。
氷浦｢なっ！Aが可愛いのが悪い…｣
『ええっ？！』
そんなやりとりがなんだかくすぐったくて、
2人で顔を見つめ合うなり、おかしくて笑みが零れた。
氷浦｢絶対、守るよ。｣
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作者名：渡邊妃葵*わたなべひなた | 作成日時：2018年12月20日 22時
