44話 ページ45
ヴィルside
Aが放った言葉を拐っていくかのように、辺りに冷たい風が吹き抜ける。
アタシはというと、ただ黙っていることしか出来ない。
___先を越された。
実は、VDCに優勝したら、Aにアタシから好きだと伝えようと決めていた。
そんな恋愛漫画のようなベタな決意に自分で自分に呆れたけれど、決意が揺らぐことはなかった。
でも、駄目だった。
アタシはネージュに負けた。
たった一票差のはいえ、負けは負け。
優勝を逃したのが悔しくて、運命に「アンタはAの隣にいるべきじゃない」と言われたみたいで、心を落ち着けるため一人になった。
でも___、彼女は此処に来た。
言葉を発っさないアタシを見て伝わってないと思ったのか、Aは髪の毛から何かを外し、ズカズカとアタシの前に歩みだす。
『ヴィルさんっ!これ、覚えてますか?』
「これ……」
Aが差し出してきたのは、白い羽のヘアピン。
…覚えてないわけがなかった。
だってこのヘアピンは、アタシがAにあげた物だから。
『これっ、私の宝物なんです!
ヴィルさんと出会って1年経った時の撮影現場で___、私、年上の俳優さんにいわゆるナンパをされたんです。
私まだ小さいから怖くて泣いちゃって。
でも、ヴィルさんが来てくれて、追い払ってくれた。
ナンパしてきた人はいなくなったのに泣きじゃくる私に、ヴィルさんは“いつまで泣いてるのよ、顔をあげなさい”って言いながら、これをくれて…。
…覚えてますか?』
「覚えてる、わよ」
撮影の休憩中に、Aに似合うかと思ってこっそり買ったこのヘアピン。
Aがナンパされてる姿も、泣きじゃくっている姿も、ヘアピンを渡したら太陽のような笑顔を浮かべたこと、全部覚えている。
そのときはネージュも共演していて、「ヴィーくん、追い払っちゃうなんてすごい!」と感動していた気がする
『あのときから、ヴィルさんは私のヒーローなんです。あのとき、私はヴィルさんを好きになった。
誰よりも美しくて、努力していて、強くてカッコいい。
そんなヴィルさんは、私は大好きなんです。
だからっ…』
Aは一旦言葉を切り、息を大きく吸い込んでから言った。
『だからっ…
かっこ悪いなんて言うなっ!!!』
弾かれたように、アタシは顔をあげる。
目の前には、アタシをまっすぐ見据えるAがいた。
アタシが恋した、出会ったときから変わらない綺麗な瞳で。
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シャーペンの芯(プロフ) - 殿堂入り本当にありがとうございます…!!! (2021年6月14日 6時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
シャーペンの芯(プロフ) - 海月くらげさん» 素敵なコメントありがとうございます!ラプンツェルいいですよね!!(興奮)そして私の作品も好きだと言ってくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年4月21日 15時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
シャーペンの芯(プロフ) - なず@ヴィル様の旦那ですさん» マジです!(笑)これからも頑張ってください!応援してます! (2021年4月21日 15時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
海月くらげ(プロフ) - 完結おめです!シャーペンの芯さんの作品もラプンツェルも好きなので、読むのがとても楽しかったです!これからも…作品楽しく読ませていただきますね!! (2021年4月21日 1時) (レス) id: 27709bd435 (このIDを非表示/違反報告)
なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - シャーペンの芯さん» えまじですか!?わああ嬉しいです!? (2021年4月18日 14時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャーペンの芯 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/syapennosin/
作成日時:2021年2月12日 17時