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43話 ページ44

Aside



ヴィルさんが居たのは、本当に人気(ひとけ)のないところだった。

終わりに近づく文化祭のざわめきが、遠くからうっすりと聞こえる。



『…ヴィル、さん』

「………A」



一人で薄暗い空を仰いでいたヴィルさんは、私の呼び掛けに顔をおろした。

そして私の方を向いて言う。



「こんなところで何してるのよ。友達と文化祭をまわってくればいいじゃない」

『何してるのはこっちの台詞ですっ!友達は大丈夫ですからっ!』



実はララは、スタッフのお兄さんと連絡先を交換し、今は彼と一緒にいるのだ。

私はゆっくりと深呼吸をしてから、ヴィルさんの目を見て話す。



『ヴィルさん。今日はお疲れ様です。パフォーマンス、とても素敵で綺麗でした』

「…そう」

『本当に美しかったです。一番』



私の言葉にヴィルさんはピクリと反応するけど、すぐに目をそらしてしまう。



「…アタシも最高のパフォーマンスができたと思った。あれが今のアタシにできる、最高のパフォーマンスよ」

『!』

「でも、ネージュには敵わなかった。

少し気分は落ち着いたけれど……、やっぱり悔しいものは悔しいわ。

それに、アンタにかっこ悪いところを見せてしまったしね」

『そ、そんなこと…』



そこまで言いかけて、『ダメだ』 と思った。

顔色を伺って放つ言葉なんて、人の心に伝わるわけがない。



…私の気持ちをぶつかけなきゃ、何にも伝わらない。



『…ヴィルさん』

「…何?」

『私の一番は、私のヒーローはヴィルさんです』



私の突然の発言に、ヴィルさんは目を見開く。



「は………?アンタ何言って…」

『私』



私は大きく息を吸い込み、覚悟を決める。

不思議と不安はない。



『私っ、ヴィルさんのことが好きなんです!

一人の女の子として、貴方を』



私は、これを伝えるために此処に来たんだから。

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シャーペンの芯(プロフ) - 殿堂入り本当にありがとうございます…!!! (2021年6月14日 6時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
シャーペンの芯(プロフ) - 海月くらげさん» 素敵なコメントありがとうございます!ラプンツェルいいですよね!!(興奮)そして私の作品も好きだと言ってくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年4月21日 15時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
シャーペンの芯(プロフ) - なず@ヴィル様の旦那ですさん» マジです!(笑)これからも頑張ってください!応援してます! (2021年4月21日 15時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
海月くらげ(プロフ) - 完結おめです!シャーペンの芯さんの作品もラプンツェルも好きなので、読むのがとても楽しかったです!これからも…作品楽しく読ませていただきますね!! (2021年4月21日 1時) (レス) id: 27709bd435 (このIDを非表示/違反報告)
なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - シャーペンの芯さん» えまじですか!?わああ嬉しいです!? (2021年4月18日 14時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シャーペンの芯 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/syapennosin/  
作成日時:2021年2月12日 17時

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