声と顔が良いお兄さんがやってきた ページ8
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花雪side
ーーその日、私は人生最大とも呼べる怒りを覚えた。
厚樫山で顕現状態の数珠丸恒次を保護した、という一見質の悪い嘘のようにも聞こえるそれ。
けれども、通話越しの岩融の声があまりにも悲痛で担当に連絡を入れる間もなく本丸に迎え入れる事を選んだ。
それから数刻もしないうちに、その判断が限りなく正しかった事を知る事になる。
血の匂い。
切られた髪。
傷だらけの身体。
ひび割れが入った本体。
死んだように冷たい身体。
花「ーー今すぐ手入れ部屋に運んで!!」
あんな声量で叫んだのは、いつぶりだったか。
その数珠丸は、調べた限り練度は1だった。
ドロップと鍛刀の刀は例外無く練度が1だが、ドロップの刀は本丸に持ち帰ってから顕現させる。
だから、練度最低値の数珠丸が顕現状態で厚樫山にいるなんて通常有り得ないのだ。
ブラック本丸、という言葉が頭を過ぎる。
夜伽、暴力、無理な進軍……人間の為に顕現して貰っている神様に対して、あまりにも罰当たりな非道の数々。
ブラック本丸が発覚したら重い罰が下されるし、審神者になる際も口酸っぱく忠告される。
そもそも、あまり分霊に酷い事をすれば本霊が怒って降ろさなくなる可能性もあるのだ。
政府側としては、戦力の削減は避けたい。
だから可能な限り摘発しているのだが……今回は、それをかいくぐって来たようだ。
今「あるじさま……」
花「ん、今剣。
もう起きて大丈夫?」
今「はい、あるじさまのていれのおかげでげんきまんたんです!」
「それは良かった」と言って笑うが、神妙な顔をした今剣に笑顔を引っ込める。
今回保護した数珠丸に遭遇したのは、厚樫山に練度上げ目的で送り込んだ第三部隊の面々。
そのうちの岩融、今剣、にっかり青江が直接数珠丸と接触して連れ帰ってきた。
その後合流した他三振りも驚きはしたそうだが、怪我の具合から見て連れ帰る事に対する反対意見は出なかったようだ。
花「今回の事、聞かせてくれるの?」
今「はい…。
じゅずまるとさいしょにそうぐうしたのは、ぼくでした。
めせんをあわせるようにしゃがんで、ぼくのほっぺたにさわって……それで、「柔らかい」ってなつかしむようにわらったんです」
花「……そっか、おいで、今剣」
今「っ……」
泣きそうな顔をした今剣を手招きして、頭を撫でてやる。
直接接触した面々は、それはもう酷い顔をしていた。
特に青江なんか、物凄い顔をして短刀達を怯えさせていた。
まぁ……それは私も同じなんだけど。
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声と顔が良いお兄さんがやってきた
【真理】刀剣男士全員そう
目が覚めたら怖いところでした→←厚樫山で拾えるタイプの天下五剣(notじじい)
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作者名:花草 アゲハ | 作成日時:2023年8月15日 22時