【成り代わり】野生の天下五剣です、拾って下さい【刀剣乱舞】 (ページ5)

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森の中で傷だらけの子供ってそれなんて事案？ページ5

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成主side

『…？』

振り返っても、そこには誰もいない。

草木が揺れた音かもしれない。
そう納得させて、前の方へ向き直った時。
カロン、と軽やかな下駄の音が鳴った。
いつの間にか、目の前には天狗らしき子供が立っていた。
紅い眼の、どこか人外じみた雰囲気を纏う小学生くらいの男の子。

けれど、獣に襲われでもしたのか私程じゃないにしろあちこち怪我をしていた。

社畜になってからは縁遠かったそれだが、私の将来の夢は保育士だったのだ。
就職難の波に押されてからは今の職に就く事しか出来なかった。
だからなのか、子供が怪我しているのはどうにも見過ごせる物では無い。

？｢あなた……｣

す、と静かに膝をつく。

どことなく困った顔をした男の子がゆっくりと近付いてくる。
ゆっくり片手を伸ばせば、数瞬のうち小さな両手で手を握られる。
そしてそのまま、誘導するようにその子の頬を優しく撫でた。

『……柔らかい…』

？｢！｣

子供のぷにぷにほっぺを撫でたのは、もう何年前だったか。
上京して社畜になってから、親戚や姉の子供とは随分縁遠くなってしまった。
懐かしむように笑えば、男の子が息を飲む。

？｢今剣、敵はーー｣

『！！』

男の子に気を取られ過ぎて気が付かなかった。
木の影から現れたのは、深い緑の髪をポニーテールにしたアイドルみたいな格好をした青年だった。
今剣、はこの男の子の名前らしい。
どんなキラキラネームだ、それともあだ名？と一瞬思ったが、それよりも。

『っ！』

？｢ッ、君……！！｣

青年は抜いたままの、血が付いた刀を持っていた。
私のよりは小さいけど、それでも骨が咥えていた刃物よりは大きい。
思わず反射的に立ち上がり、男の子もとい今剣を背中に隠す。
青年はなにかに気付いたように黄色の目を見開いて、私の身体を隅々まで見て苦々しげに顔を歪める。

？｢今剣、彼は…｣

今｢はい、まちがいなくあるじさまのさがしていたじゅずまるです。
けど、このけがは……｣

数珠丸？なんだよ、その名前は。

もしやこの身体の名前か、とも思ったけど名前を間違えられたら反射的に訂正してしまうのが常という物で。
思わずムッとしながら訂正を入れようとして。

『っ私の、名前は……』

あれ？

なんだっけ。

途中まで言いかけた言葉が中途半端にぼやける。
はた、と喉に口を当てる。
なんだっけ、なんだっけ。
私の名前、ちゃんとある筈なのに。
思い出せない、思い出せない。

『私は、一体……』

誰だ。

そう譫言のように呟いた時、背後の今剣が服の裾を掴んだのが分かった。