【成り代わり】野生の天下五剣です、拾って下さい【刀剣乱舞】 (ページ4)

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A.とりあえず夢だと思うことにしたページ4

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成主side

『ゲホッ！！ハァ、ハァ……クソッ！！』

開放感、とはこの事だろう。

ザパァ、と音を立てて陸に上がった。
思いっきり咳き込みながら、とりあえずまた引き摺り込まれないよう急いで陸から離れる。
服が水を吸ってめちゃくちゃ重い。
でも髪を掴まれる心配は無くなった、何故なら……あの時切ったのは、オバケでは無く私の髪だからだ。

位置的にオバケを斬るのは難しそうだったので、迷うことなく首の後ろに刃を入れた。

掴まれるくらい長かった髪が今や項くらいまでの長さしか無いが、これで命が助かったと思えば安い物だろう。
けれど、まだ安心は出来ない。
掴んだ髪を切った事により隙が出来た巨大オバケの胸辺りに刀をグッサリしておいたけど、あれだけ大きければ生命力も強そうだ。

とにかく、安全なところに行きたい一心で森の中を全力疾走する。

『……あれ？』

不意に、すっと身体が軽くなった。
軽くなった、というのか足元が無くなった、というのか。
思わず下を見ると、遙か遠いところに地面が見える。
率直に言うと崖。

あ、ヤバい。死んだ。

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『っ……あれ……？』

身体が軋むような痛みに目が覚めた。
まだ現実世界で目覚めないのか、と軽く驚きつつ本当に大怪我したような痛みに思わず顔を顰める。
というか痛いのもあるけど、それと同じくらい思考を支配してるのがあった。

『……へっくし！』

寒い。
めちゃくちゃ寒い。

池に落ちたのだから当たり前っちゃ当たり前だけど、それはそうとして両肩を抱いてガタガタと震える。
崖から落ちて随分ボロボロになってしまった。
抜き身のまま持っていた刀もあちこちにひび割れが入っている。
折れてなかったのが奇跡だ。
ただの武器である筈なのに、何故かそれが自分の半身のような気がして。

ひび割れだらけのそれをそっと拾い上げ、丁寧な手付きで鞘に納刀する。

どうしてか、大切にしなければならない気がして。
折れなかった事をどうしようも無く喜びながら、上体を起こした体勢で静かに刀を抱き締めた。
そうすれば、不思議と落ち着いてくるのが分かった。

いつまでそうしていただろうか。

『……早く、ここから離れないと…』

岩を背負ったような身体の重だるさに顔を顰めながら立ち上がると、左足に走る激痛。
振り返りたくは無いけど、多分折れたか捻挫だ。
それじゃ余計にさっきのオバケに見つかるのは避けたい。

左足を引き摺りながらフラフラと森の中を移動する。

すると不意に、誰かに呼ばれた気がした。