恋人の関係１：今市隆二 (ページ9)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:203,002 hit

＊ページ9

「A、どうした？なんで、泣いてるの？」

隆二に言われて、泣いてしまっている自分に気がつく。かっこ悪。

こちらに近づいてくる女性に気づき、私は腕を掴んでいた隆二の手を離した。

女性「隆二君、どうしたの。・・・知り合い？」

駆け寄ってきた女性は、隆二の服を掴みながらこちらを見てくる。

隆二が何かを言いかける前に、私は言葉を発した。

『ただのファンです。今市さんにお会いできて、感激してしまって。すみません、お買い物しているところを邪魔しちゃって。失礼します。』

頭を下げて、逃げるようにその場を離れた。

並んで立つ二人が、頭から離れない。

近くで見た女性は、美人さんやった。

目鼻立ちがはっきり、サラサラの黒髪、スラっとした体型。

雪村さんに、どことなく雰囲気が似ていた。

これ以上泣いたら、みっともないで。家まで、我慢や。

必死で歩いて、そろそろ住んでいるマンションが見えてくる・・・うそやん、間違えた。

ここ、隆二のマンションやし。なにしてんの、私。

早よ、自分の家に帰らんと。

慌てて道を引き返そうとUターンしたら、隆二が目の前に立っていた。

「ちょっと、来て。」

腕を掴まれて、そのまま部屋へと連れて行かれる。

玄関から先に入ることをためらっていると、大きなため息をつかれた。

抱き上げられて、ソファーに運ばれた。

私の前で、仁王立ちしている隆二。

「ただのファンって、なに？Aは、俺の恋人でしょ？」

イラッとした口調の隆二。

「ねぇ、どうなの？たった数週間会えなかったからって、俺とは恋人じゃなくなった？」

たった数週間・・・。されど数週間やで、隆二。

気まずくしてしもたと思って、勇気を出して電話かけたのに。

折り返しもなく、連絡もしてくれへんかったやん。

「何か言いたげな顔して、黙らないでよ。」

『彼女、どうしたん？』

「･･･あっ。」

えっ？忘れとったんかい。

携帯を取り出し、電話を掛け出す隆二。

「もしもし？ごめんね。――」

会話を聞きたなくて、ポケットからイヤホンを取り出し耳に突っ込んだ。

こんな時に限って、三代目の曲が流れてくる。

いつもやったら嬉しいはずやのに、なんか今日は苦しい。

堪えていた涙がとめどなく溢れてくる。

何や、隆二と付き合う様になってから、よう泣くようになったわ。

メンタル弱なったんちゃう、私。