恋人の関係１：今市隆二 (ページ10)

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『･･･もう嫌やなぁ。』

思わず漏れたつぶやきは、しっかりと隆二に聞こえてたみたい。

「もう嫌って、どういう意味？」

私の両耳からイヤホンを外した隆二が、そっと涙を拭いつつ、優しく問いかけてきた。

涙を拭う手を振り払い、すくっと立ち上がって玄関へ向かう私。

「A、どこ行くの？」

『ごめん、帰る。また、連絡するわ。』

「A、今話そう。」

ゴンッ。

玄関のドアを勢いよく開けたら、何かにぶつかる音。

「痛ッ。」

「健ちゃん、大丈夫？」

男性と女性の声が、ドア向こうから聞こえた。

慌ててドアを開け直した隆二が、相手を中に招き入れた。

おでこを押さえながら中へ入ってきた涙目の健ちゃんと、スーパーで会った女性。

私も女性もお互いに驚いたが、でも今は、それどころやない。

『健ちゃん、ごめん。大丈夫？』

「とにかく、部屋に入って。Aは、冷やすのに使えそうな物を探すの手伝って。」

再び室内へと逆戻りする羽目に。

おでこを冷やしながら、ソファーで寛いでいる健ちゃん。

キッチンにいる女性と隆二。

『ほんま、ごめんな。』

健「大丈夫やって。すぐに治るわ。」

にかって笑う健ちゃん。

『ちょっと、確認させてな。』

腫れがひどかったらあかんし、万が一傷とか出来てたら。

健ちゃんの顔に近づいて、赤くなっている部分を確認していた。

急に襟首を掴まれて健ちゃんから遠のく、健ちゃんも同じく襟首を引っ張られている。

隆・女「「近い。」」

ブスッとしている隆二と女性。
女「あなた、どうしてここに居るの？」

健「どうしてって。Aは、隆二の恋人やで。」

女「そうなの？さっき会ったときは、ただのファンですって。」

チラッと私を見た健ちゃんが、何かを察した様子で隆二を見る。

健「隆二、ちょっとAと買い出しに行ってくるわ。」

心配そうに私と健ちゃんを見る、隆二と女性。

『ありがとう、健ちゃん。大丈夫やし、そっちの部屋で隆二と話してくるわ。』

健「そうか。ほな、理子とご飯作っとくわな。」

うなずき、隆二の手を引いて寝室へ向かった。ホッとした様子の理子さんが、視界に入った。