風邪 ページ7
健ちゃんからのLINEで、隆二が風邪を引いて寝込んでいると知った。
すぐに駆けつけたいが、福岡出張中の私。
なんとか仕事を終わらせて、あとは高橋に任せて新幹線に飛び乗った。
「うつる、帰って・・・ごほ、ごほごほっ。」
咳がひどいみたいで、呼吸まで荒くなっている。
立っている事さえ辛いのか、壁にもたれかかっている隆二。
玄関から先へ行こうとしたら、制止された。
「・・・ごほ、ごほっ。入んないで、ほんと帰って。」
『ちょっとだけお邪魔したら、すぐ帰る。マスクもしてるし、大丈夫やって。』
再び咳き込み始めた隆二の背中をさする。そのまま、支えながら寝室へ移動した。
ベッドに寝かしつけて、咳を和らげそうな飲み物を作る。
寝室に入ると、丸まって寝転がっていた。
声をかけると、咳き込みが苦しかったのか、涙目の隆二が見上げてくる。
『これ飲んでみて。喉の痛みや咳き込みが、少しはましになるで。』
「ん。」
私はすぐにキッチンへと戻って、夕食の準備に。
食欲ある言うてたけど、胃に優しい方がええんやろなぁ。
卵雑炊の準備と、冷蔵庫にゼリー、すりおろしリンゴ、桃などの果物も用意しておいた。
常温のポカリや水をベッドの脇に置いといてあげな。再び、寝室へと向かう。
目を閉じて横たわっている、隆二。そっと、おでこに手を当てた。
熱はあらへんようやし、咳もさっきより治まったみたいやな。
「・・・まだいたの・・・けほ、けほっ…。」
薄っすらと開かれた目で私を捉えると、迷惑そうに歪む顔。
本気で嫌がられてるみたいやし、さっさと帰ろ。
何も言わず寝室を出て、そのまま部屋も出た。
駅の改札口をくぐった瞬間、携帯が鳴る。
『もしもし?隆二、なんかあったん?』
「今、どこ?黙って帰るなよ。」
なにキレてるん?
自分が、早く帰れオーラだしとったくせに。
「A、聞いてるの?」
『帰れ、帰れって言うとったん隆二やろ。』
「それは、」
『もう切るで、電車来たし。お大事に。』
「A、まっ、」
先に携帯を切って、電車に乗り込んだ。
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作者名:薫 | 作成日時:2016年11月16日 3時