Dear my besties〜from Finally〜

☆ ページ22

確かにオレたちは似ていた。


業種こそ違うけれど、自分が気に入ったこれと思う物だけを提供するちいさな店を、たったひとりでまわしていく経営者。


この肩書きの人間というのはよくいそうでいて意外とオレの周りにはいなかった。



どんなにいやな客でもおおらかな笑顔をみせるAがだいすきだった。その反面、まじめで頭の回転がはやく、経営者としての嗅覚の鋭いAを同じ経営者として尊敬してもいた。なにより可憐な花のような女性らしさを愛していた。

ふたりで仕事の話や理念、夢の話をしていると時間が過ぎるのを忘れた。そんな深い話を誰かとしたのははじめてだった。友達はみんな普通の会社員で、わかってもらえそうな友達はいなかった。

やっぱりこのひとはオレの仲間だ。オレの最初の直感は間違っていなかった。

そう思えば思うほどいとしさが増していった。



このひとと一緒に生きていきたい。



最近そう思う瞬間が増えている。


でも。

いまはまだ。もうすこし。


サラリーマンをやめて自分の好みの服やアクセサリーだけを取り扱う店を出して、どうにか回り始めたところだった。


これがきちんと軌道にのったら。いや、二店舗目を出すめどが立ったら。

Aもそうだ。いまが正念場だと思う。料理本や雑誌などの露出が増えてきているいま、店を大きくするかどうかの山場に近づいていると思う。


オレたちの店を軌道にのせることができたら。


それまではこのAへの気持ちと、ふたりの心地いい関係を育てていく時期だと思っている。




電車のガラス窓にうつる自分を見つめる。シャツにネックレスを重ねづけしたダメージデニム姿の自分が妙に頼りなく見える。スーツを脱いだ自分は決定的になにかから逃げているように思えて、目をそらした。

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