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ビル内に踏み入り、スマホのライトで照らしながら探し歩いた。
その間、零さんは約束通り私の手を固く握って離さないでいてくれた。
頼りになるその大きな背中を見て、ぎゅうっと胸が締め付けられる感じがした。今すぐにでも抱き着いてしまいたい。
最近になって急激に加速するこの人への想いをどうすればいいのか、夜な夜な考えているのは私だけの秘密である。
そんな事を頭の片隅で考えていると、視界の端に何やら人影が映る。
しかしそれは、全体像ではなく横倒しになった人間の足で。上半身は物陰に隠れてしまっている。
暗闇という事で絶対的な確信は持てないが、こんな所に寝ている人がいるはずがない。
「ねえ、零さん……あれ、人の足ですよね？」
「ん？……おい、あれもしかして…」
もしかするかもしれない、と私達はライトを向けて駆け出した。
明るく照らされたそのスラックスは、カーキ色。作中で風見裕也が着ているスーツもその色である。
私の中で、一つ核心に近づいた。
「誰だ！」
零さんがその人の顔にライトを当てた。
大声を出した零さんに動じることも無く、その人はそこに寝ている。
隣に立つ零さんが息を呑んだのが分かった。
何故なら、目を閉じたその顔が、探していた張本人のものだったからだ。
零さんはハッと我に返ると、私の手をそっと解いて倒れている風見さんに駆け寄った。
離れたこの手が、もの寂しく、切ない。
手のひらを数秒見つめ、私も同様に彼に駆け寄った。
零さんが風見さんの肩を掴んで、揺らしている。
爆風によるかすり傷やちょっとした火傷は見られるが、特に目立った外傷はない。
「風見！！大丈夫か、しっかりしろ！」
「風見さん……」
必死に声をかけると、うぅと苦しそうな声を漏らして風見さんはピクリと動いた。
本当に意識を失っていただけのようだ。
私達はホッと胸を撫で下ろすと、再び声をかけた。
「風見、起きろ」
「風見さ〜〜ん。降谷さんがご立腹ですよ〜、弁明するなら今のうちですよ〜？」
横から声をかけ始めた私を、ギョッとした顔で見る。別に怒ってないが、と零しているが別にそういう訳では無い。
風見さんにはこれが一番効くという話なだけだ。
すると、効果は絶大だったようで。
風見さんは顔を歪めながらもカッと目を見開いた。
「な、…うっ……降谷さん、どうして……」
「風見！気が付いたか！」
覗き込んだ零さんの顔を、怯えたように見ていたのは言うまでもないだろう。
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