-S- loving you.Ⅱ (ページ15)

今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:323,093 hit

65. ページ15

＊＊＊

彼女は、崩れ落ちるようにテーブルに突っ伏しました

そして、
聞こえないくらいの小さな小さな声で

「愛してる」

と呟いたのを、

僕は確かに聞きました

今でもその声色を覚えています

とても美しく、儚げでした

なんだか尊いものであるかのような気がしてきて、僕は一瞬、

一番伝えなければならないことを、
心の底から躊躇いました

しかし、伝えなくては、今日僕がここに来た意味がなくなる

あぁ、やっぱりこの家のインターホンも、
何かを変えてしまうスイッチだったのだと考えてしまいました

「…こんなことを…言うのは僕も本当に、心苦しいのですが、

どうしても、あなたに伝えなくてはなら

ないことが…あるんです」

思い切って言いましたが、

彼女の瞳を見ながら言うのは

とてもじゃないけど、
小心者の僕には出来ませんでした

涙を拭いながら、彼女は顔を上げました

「……なんですか？」

しばらくの沈黙

意を決して声を絞りだしました

「平野紫耀の…刑が…

一週間前、執行されました」

「…一週間前？…随分遅かったんですね…

一体どんな…刑ですか…？」

あいつの裁判はメディアでも大きく取り上げられていましたし、
薄々感づいてはいるはずなのに…

彼女は気づかないフリをしていました

その証拠に、彼女の瞳は、揺れていました

哀れで、可哀想で、
それでいて美しかった

...

「………………

………死刑、ですよ」

.