-S- loving you. (ページ10)

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10. ページ10

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ショウ

一体どんな人なんだろう…

自分より一回りも年上の相手を怯えさせる…

優しいのか、恐ろしいのか全くわからない

"一家惨殺"

ふと頭によぎるその言葉

エヌやエックスとは違って
表に出ない冷たい恐ろしさを、
この人は隠し持っている

普段は仮面に隠して
時にさっきのように本性を出すんだろう

「…裏の山まで行ってくる、
…お前、行くぞ」

『…はい…』

そう言ったショウの恐ろしく冷たい表情はどこかに消えて普段の表情に戻っていた

裏の山は、アパートのすぐ裏にある
あまり人の手が入っていないとても綺麗なところ

そこをすぐ入ったところに
小さな滝がある

「…拭くものはそこに置いとくから」

ショウは呟く

彼は2日に1回のペースで、私をここに連れてくる

アパートにはお風呂がない
彼等は銭湯に行くけれど私は行けない

「さっさと洗ってこいよ」

大きな岩の上に仰向けに寝転がり目を瞑る

そのあいだに私は岩の影まで行き、
水に浸かる
水温はとても冷たいけど、夏の日差しは強くて逆に心地よく感じる

ふと、彼を見ると
日の光にナイフをかざして眺めていた

ナイフを見つめるその眼差しは
焦点があっていなくて何か遠くのものを眺めているよう

『……綺麗』

無意識にそう思った。

光をはじくナイフと、それを見つめる冷たい瞳が消えそうだった

「…ん？着たか？」

『あ、はい着ました…』

「戻るぞ」

ブイは黙って私の手を取ると、引いていく

.

アパートを前にすると、だんだん私の体は動かなくなってくる

「どした？」

涙を浮かべている私を見て

「怖い？」

ふっ、と小さく笑う

怖いに決まってる。
そう思っていると、ショウはパーカーのポケットに手を突っ込み、何かを探した

「ほら、これ」

私の前に手のひらを差し出した
その中には、またあのレモンの飴

驚いて、ショウを見上げる

「…これ食べればちょっとは紛れる」

子供だましだと思っても、不思議と怖さはなくなっていた

飴玉を口に入れると
甘酸っぱいレモンの味が広がる

『…ありがとう、ございます…

…今まで、…っ…生き延びれたのも、ショウさんの…おかげです…っ…』

そう言うと、
彼の瞳が一瞬、揺らいだ

.