-S- loving you. (ページ40)

今日:29 hit、昨日:10 hit、合計:702,113 hit

40. ページ40

＊＊＊

…聞くなら今しかない
でも、いざ言おうと思うとどこから話していいかわからなくなる

玄関先でじっとしている私を見て彼は
「どうした？」と首を傾げる

その声に
その過去に

…どうして、1人で背負っているの

「…なんで泣いてんの」

そう言われてはじめて、自分が泣いていると知る

『…見たの、、』

「…何を？」

『…DVD』

俯いていた顔をあげて、
恐る恐る彼を見る

彼は目を見張っていた

「…1年くらい前の…ニュースのやつか」

私が頷くと、
ゆっくりと私を抱き寄せた

「ひどい人間やろ、俺…」

耳元で悲しげに聞こえる声
聞き取れないほどの、か細い声で言葉を発してゆく

「嫌いになった？」

『ならないよ…』

「……なんでだよ、、酷いやつだって、
罵れよ…」

『そんなこと、
できるわけ…ない…っ』

紫耀が、消えてしまいそう

自分を責めている
彼の苦しみ

人はそれを自業自得だって言うかもしれない

『私、…何ができる？』

なんでもいい

『…私が、紫耀にしてあげられることって、何？』

教えてほしい
だってあなたは私の生きる意味
私の生きる理由の、すべて

私の世界を
綺麗なものに塗り替えてくれた

私には紫耀が必要で…
きっと紫耀も私を必要もしてくれている

それがどんなに幸せで、
そのことにどんなに救われたか

「A、」

抱き寄せられた体を離すと、
今度は私の両頬を手のひらで包み込んだ

「Aは……

…俺の隣で、笑ってて」

そう言って、切なく微笑む

儚くて、壊れそうな、そんな笑み

そういう笑い方をする彼が好き

弱音を吐いている彼も

ちょっと怖い彼も

優しい彼も

たまらなくなって、
私は彼の首に腕を回した
背中に温かい手が添えられる

『…紫耀、紫耀のこと、全部私に、教えて…』

「うん…」

応えるように強く、抱きしめてくれた

.