-S- loving you. (ページ16)

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16. ページ16

＊＊＊

部屋に戻っても
特にすることはないので、
褪せて黄色く擦り切れた畳に彼はまた横たわった

私もすることはないし
同じように少し距離をおいて隣に横たわった

外の闇が深くなっていた

天井の木目がなんだか不気味で、
上を向いていられなくて横を向く

端正な横顔が目に入る

…この人は、今どんなことを考えているんだろう

そのすべてを憎みきったような
色のない瞳に…

この世界はどう見えているんだろう

私も目を閉じてじっとしていると、
彼がぽつりと、

「…明日は買い出し行ってくる」

『…はい』

小さな声で返事をして、
私もまた目を閉じた

.

「起きろ、朝やで」

鼓膜が震えるその声のほうに寝返りを打つと、

「…そろそろ行ってくる」

あぁ、そうだった
彼が買い出しへ行く時だけ、

私の足には足枷が付けられる

でもその時、床に手をついて起き上がろうとして立ち上がった瞬間、視界がぐらっと傾いた

倒れる…！！

そう思ったときには遅くて、
前屈みに倒れ、私の額と彼の額がぶつかった

そしてその弾みで、彼の上に覆いかぶさってしまった

『…っ…いた…』

「痛…」

彼が呻いた

一瞬フリーズしてから、
はっと我に返る

『ご、ごめんなさい！！
お願いします…っ、殺さないで！次からは気をつけます……っ…』

彼の上から降りて咄嗟に出た言葉は

"殺さないで"だった

.