看守長現る!!�� − No side − ページ38
看守長室前まで来たハジメはドアを二回ノックする。室内から「入れ」と聞こえると、そのまま室内へ入る。
「失礼します。お呼びでしょうか、看守長」
両脇の壁に十を超える看守が並ぶ中、中央にあるデスクに座っていた女性――南波刑務所看守長・百式百子はデスクの上で手を組んだ。
「13舎主任看守部長、双六一。君からの報告が聞きたい」
「報告書は全て記載されているかと思いますが、目を通されてなかったといことですか？」
「オイ、ハジメ!! てめぇ誰に向かって口聞いてやがる!! 看守長が報告をしろと言っているんだ！ 命令に従え!!」
ハジメに怒鳴ったその人物は、南波刑務所第5舎担当主任看守部長・悟空猿門だ。
ハジメとは犬猿の仲である。
「うるせぇんだよ、サル。黙ってバナナでも食ってろ」
「るせ―――!! サルって言うなゴリラハゲ!!」
「誰がゴリラハゲだって？ ん？ もっぺん言ってみ？ 折るぞ」
「ぎゃひいぃい！ 苦しいぃいいい!!」
「や、やめんかお前達!!」
猿門にチョークスリーパーを決めるハジメ。そんな彼らを百式が慌てて止めに入る。
「ゴホン、では本題に戻る。私はただ確認したいのだ、君の口から13舎の様子を。何せあそこには例の5人が収容されているからな。報告書よりもより詳しく聞きたいのだよ、本当に問題はなかったのかと」
そこで一度言葉を切ると、百式は改めてハジメの方を見た。
「私は君の能力を認めているからこそあの13舎を任せているんだ。だからこそ君に限って囚人の脱獄行為を許しているわけないと直接報告してほしい」
「はい、一切問題はありません」
「そうか、ならいい。では次だ。先ほど言った『5人』の件だ。君は彼らをどう思う？ とてもココに収容しなければならない程の重罪人だと思うか？ これまで各刑務所で数々の脱獄という罪を犯す彼ら『脱獄囚』が何故こうも大人しいのか。
何故彼らは他の刑務所のように脱獄を図らない。何故彼らの報告は入らない。それではあの『極悪脱獄囚』とレッテルを貼られた囚人達がとても安く見える。私が高くみていただけなのか…。
間近で見ている君なら何か知っているんじゃないか？ 奴らは何を企んでいる？ 質問をあの5人の件に絞りもう一度聞こう。何も問題はなかったか？」
一拍置いて黙った後、ハジメは変わらず同じ言葉を告げる。
「はい、何も問題はありません。奴らが外に出る気配はありません」
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作者名：いちご | 作成日時：2017年9月19日 17時
