ペディキュア※ ページ25
＿雨の匂い。
ベランダに続く窓を開けると、夜でも生温い風が吹いていた。
その温度に加えて、今夜は雨も降り注ぐ。
除光液片手に腰を下ろした。
ベランダに投げ出した足は、リビングからの光が届かず夜に染まる。
思い出すのは、彼のことばかり。
…いつもそうだ。
私を幸せにするのも、苦しめるのも、全部亮だ。
携帯を手に取りLINEを開く。
亮の名前は、もう随分スクロールしないと見つからなくなっていた。
確かに、彼が付き合っているのは私だけだ。
でも実際に会っている女は私だけじゃない。
…そんな私は、長い間亮に会っていない。
なぜ彼は私に付き合おうと言ってきたの？
除光液特有の匂いが鼻を刺す。
足の爪を飾っていた鮮やかな赤色が全て落ちた頃、放置していた携帯が震えた。
なんだか確認する気になれなくて、そのまま無視する。
別れる、なんてできない。
どうしたって亮が好きで、そんな彼も毎度私を好きだと言う。
その言葉に安心して、彼が私から離れても大丈夫な気がしてた、ずっと。
…でもダメだった。やっぱり寂しくなる。
私が孤独に必死に耐えているその時、きっとあなたは知らない誰かと体を重ねているんだ。
背中に跡を付けて帰ってくるの、わざとでしょ？
亮の前で泣いたことはない。
だから安心してるの？私は強いから大丈夫だって。
本当は、弱いっていうのに。
ガチャ、と鍵が開く音がした。
「ただいま、A」
『……』
なんなの？
呑気にただいまって言い放つ彼に、亮が戻ってきて少なくとも嬉しいと思う私に。
心底、腹が立つ。
自分から玄関の方を振り返ることはしなかった。
懐かしい、大好きな匂いが足音と共に近づいてくる。
だから、彼が私の顔を覗き込んできた時の、彼の表情に驚いた。
…そっか、今、
『なんで泣いてるの、って思ってるでしょ』
また、頬に一筋流れた感覚。
笑って言おうとしたけど、ちゃんと笑顔になれているか不安だ。
すると、何も言わない亮に突然抱きしめられた。
久しぶりの温もりが、辛くて、やっぱり嬉しい。
『どうしようもなく亮が好きだよ。だから…』
別れよう。
はっきり言えば、背中に回された彼の手が震えているのが分かった。
…あぁ、やっと離れられる。
あなたとの時間はすごく、すごく苦しかったよ。
ちゃんと、そう思うのに、
あなたと出会えたのが幸せだったのも確かだから。
流れた涙が、止まらなかった。
「真夏の果実」サザンオールスターズ
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麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます〜！今回の更新もかなり日が空いてしまってすみません…。感想もいただけてとっても嬉しいです！更新は、どうか気長にお待ちください！(*´∀`) (2021年12月23日 8時) (
レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません｡｡｡ かなりお久しぶりです。 更新ありがとうございます。 物語読みました。 続きが気になります。更新待ってますね。 (2021年12月14日 0時) (レス) @page35 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます！ご指摘の部分は全て修正したと思います！苗字の表記の所、単純に私のミスでした…すみません。タイトルの「再開」はわざとで、「再会」との掛詞です！紛らわしくて申し訳ないです…。ご丁寧にありがとうございました！更新も頑張ります(*´∀`) (2021年8月11日 21時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語短編で読みやすかったので一気に読んじゃいました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 ○ページ23のここの部分 「(名字)」とここの部分 名字)に話しかける口実が欲しくて、授業では寝たふりをして彼女を見ていた。 これも名字が無くて名字表記なのですが｡｡｡ (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麦 | 作成日時：2021年4月11日 21時
