君の隣で、 ページ24
ガヤガヤと盛り上がる教室内。
高三になってから初めての席替えだからか、ほぼ全員が興奮気味だ。
三年目だとはいえ、生徒数の多いこの学校では、まだ一度も話したことのない人だって沢山いる。
そして席替えが終わって、隣の席になった女子もそうだった。
『よろしくね』
「…うん、よろしく」
控えめな声でそう挨拶をしてきた彼女は、俺が返事を返すと微笑んで、そして視線を黒板の方へ向けた。
真面目そうな子。
それが、彼女の第一印象だった。
.
席替えをして初回の授業は数学。
正直言って、数学のこの範囲は少し苦手だった。
「じゃあ、この問題…吉沢!」
練習問題に頭を悩ませていると、突然先生に当てられた。
…よりによって唯一分からなかった問題当ててくるなんて。
助けを求めるようにちらりと隣を見ると、ばっちり目が合った。
すると彼女は先生に見えないように、ノートの端に答えを書いて見せてくる。
指された指の先の数字を言うと、先生は正解、と解説を始める。
ありがとう、と口だけ動かして伝えると、彼女は微笑んだ。
チャイムが鳴った後、彼女は教科書を持って先生の所へ質問に行っていた。
解決したらしく席に戻ってくると、カバンから本を取り出して読み始める。
…何の本なんだろう。
ブックカバーが付けられた厚い本の題名がやけに気になった。
「亮〜」
話しかけてきた友達に返事を返しながらも、視線は彼女の方に向きそうになっていた。
誰にも気付かれないように、真剣な表情で本を読む彼女の姿を目の端に捉えた。
君は、何を面白いと思うの?
好きな本のジャンルも、苦手な教科も、なんでも。
ただ知りたいと思った。
_それが、5月の出来事。
「あの頃から、ずっとAが好きだった」
今は3月、無事卒業式を終えた俺は、校舎裏にいる。
…目の前には、君。
『…私も。吉沢くんが好きです』
幸せ、としか言い表せない気持ちに包まれて、二人して笑顔になった。
春の始まりの柔らかな風が吹く。
5月の俺より短くなった髪が、5月の君より伸びた髪が、ふわり、揺れた。
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麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます〜!今回の更新もかなり日が空いてしまってすみません…。感想もいただけてとっても嬉しいです!更新は、どうか気長にお待ちください!(*´∀`) (2021年12月23日 8時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - こんばんは(*^^*) 夜分遅くにすみません。。。 かなりお久しぶりです。 更新ありがとうございます。 物語読みました。 続きが気になります。更新待ってますね。 (2021年12月14日 0時) (レス) @page35 id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
麦(プロフ) - 游さん» ありがとうございます!ご指摘の部分は全て修正したと思います!苗字の表記の所、単純に私のミスでした…すみません。タイトルの「再開」はわざとで、「再会」との掛詞です!紛らわしくて申し訳ないです…。ご丁寧にありがとうございました!更新も頑張ります(*´∀`) (2021年8月11日 21時) (レス) id: c17c33a14a (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語短編で読みやすかったので一気に読んじゃいました。 続きが気になります。 更新待ってますね。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
游 - 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 ○ページ23のここの部分 「(名字)」とここの部分 名字)に話しかける口実が欲しくて、授業では寝たふりをして彼女を見ていた。 これも名字が無くて名字表記なのですが。。。 (2021年8月11日 2時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦 | 作成日時:2021年4月11日 21時