先生とぼく (ページ19)

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「だめ…ですか。」

「部活の試合があるんだ。申し訳ないけど薮だけ特別扱いってのは出来ないよ。それに夏期講習組の小テストも作らないとだし…」

「ですよね…すみません。今週はお時間作ってくださってありがとうございました。」

薮の補講をしてやりたいんです。
この案に乗ってくれたのはほんの数人だった。
分かってる。皆忙しいんだ。
だから生徒一人のために時間を割くのは難しいって。

ただ、この補講が出来なければ薮の卒業が危ういんだ。

最近の薮は補講でも嬉しそうに俺に会いに来てくれる。せっかく楽しそうに通ってくれるようになったんだ。ようやく笑顔を見られるようになったんだ。このまま通って欲しい。…とは言え俺が教えられる国語と社会は他の先生に頼まず俺が受け持っているけど、それ以外の教科はどうしても他の先生の協力が必要なわけで…。

「はあぁ…」

「隣ででっかいため息つくのやめてもらえますか。」

自分のデスクにつくと大きな溜め息が出た。
隣のニノはそれを聞いて呆れ顔。

だって、なかなか思うように行かないし、
せっかく薮が頑張ろうとしてるのに、
俺がそれに協力出来ないなんて嫌だし。

「別に教えるのは相葉さんのクラスの授業を受け持ってる先生じゃなくても良いでしょ。」

「…どういうこと？」

「相葉先生のクラスとは全く関わりないですけど、補講手伝うって言ってるんですよ。」

「えっ、えっ！？いいの！？」

「現役アイドルを生で見れるチャンスですし。そんなに興味無いですけどこんな機会滅多にないだろうし。」

素っ気ないようで情に熱くて、ニノはほんとに優しい。パソコンに目を向けてカタカタと手を動かしながら、早く日程決めてくださいよと話すニノ。ツンデレかよ～と脇腹をつつくと、前言撤回しますよと睨むので大人しくすることにした。

なあ薮、お前のこと応援してる人は、
お前が思ってる以上に沢山いるぞ。