第二十七話 ページ29
半助の部屋前の柱にもたれ掛かって、Aは半助を待っていた
隣の部屋から山田伝蔵が顔を出し問うた
「和泉先生じゃないですか。こんな所で何を？」
「こんばんは、山田先生。土井先生と酒を酌み交わそうとお誘いしたので、お待ちしているところなんです」
「…なるほど。二人共あまり羽目を外すと、明日に響きますからな。半助にもそう伝えておいてください」
「お気遣いありがとうございます。土井先生にもそうお伝えしておきます」
山田は頷き笑みを見せると、襖を閉めて部屋へと戻っていった
Aは満月の光によって、夜にしては普段よりも明るい景色を眺めていた。時々吹くそよ風が心地良い
ふっとAに影が落とされ、顔を上げると半助が居た。酒を飲む前から顔が赤く、若干息が上がっている
「すいません、遅れてしまって…！」
「お待ち申し上げておりました」
頭を下げ、隣に座るのを促すと半助は「失礼します」と従った
「食事が済んだら行こうとしたんですけど、鶴舞に捕まりましてね…『風呂行かないの？』と言われ…行ってきました……」
はぁ…と深く溜め息をつく半助。爽花に言われたものの約束の時間を伸ばす訳にもいかず、大急ぎで入ってきたのだ
頬が赤いのは、風呂上がりで暑いからのようだ。髪も乾ききっておらず、髪を下ろしたままだった
忍装束、髪を結んでいる姿しか見たことのないAは半助をジッと見つめた
「…和泉先生？」
「あ！ジロジロと見て失礼しました…！」
恥ずかしさを隠すようにと御猪口を渡す
半助が受け取ると、濁酒が並々と注がれる
「さあ、いただきましょう」
この時代の酒は度数は低い。だが、それも多く飲んでいると酔ってくるものだ。二人は山田に言われた通りハメは外さないようにとしていたが、生徒の事を酒の肴にしていると、どんどん酒が進んでいく
半助がほろ酔いで気持ち良くなってきていた所、Aは酒気によって半助よりも酔っているようだった
──しまった、自分のペースで飲みすぎた
反省していると、若干呂律が回らない言葉遣いで突然名前を呼ばれた
普段は「土井先生」呼びだというのに、今だけは「半助さん」と
「半助さん…」
「和泉先生…？」
嬉しさからか心臓が高鳴る
「半助さん……やっぱり……間違いなかった…」
上機嫌から一変し、今度はポロポロと泣き出すAに戸惑い、涙を拭いとってやる
「お話しましょう。半助さん」
嗚咽混じりにAは呟いた
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つあ。(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです。ドキドキしながら読ませて頂きました！素敵な作品をありがとうございます！！ (2022年4月10日 21時) (
レス) @page32 id: 1b35df4618 (このIDを非表示/違反報告)
花太郎(プロフ) - 幼稚園並みに幼い絵を描く自分からしたら絵が上手ですね 羨ましい 漫画で好きなキャラも書けません コツとかあるの？ これからも応援していきます (2015年9月8日 21時) (レス) id: 558271d4dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：錦浦麗音 | 作成日時：2015年7月26日 23時
