第九話 ページ11
「土井先生。危ないところを助けていただいて本当にありがとうございました」
「いやいや、そんなにかしこまらなくても」
深々と何度も礼をするAに、照れるように苦笑いする半助
そんな中で此花は、伸びているゴロツキの男達の間から黒い板拾い上げた。板の表面には、白い布地に文字が書かれており、此花はそれを読み上げた
「…一年は組 出席簿」
思わず「えっ」という驚愕の声が漏れる
もしや、とAは半助に問うた
「先程、鈍い音がしたのはもしかして…」
「ああ、この出席簿を投げたんです。角に当たると痛いですから」
と笑う半助。次はAが苦笑いを浮かべる番だった
「あの、土井先生…もう少しお礼を述べたいのは山々なのですが、私達そろそろ宿を探しに行かなければならないのです」
「……今からですか？」
「何軒かはもう回ったのですが…どこも人が一杯らしくて」
申し訳なさそうに眉尻を下げるAと、驚き目を見開く半助
そんな二人を交互に見つめて此花は一つ提案した
「土井先生。土井先生のお家は？」
「わっ、私の家かい？！」
「こら、此花！」とAが叱っている短時間のなかで、半助は脳内を全力で働かせる
くの一とは言えど、女性二人をこのまま外を歩かせる訳にはいかない。年頃の女性を家に招くのが気が引ける、とは言っていられない
困っているのなら、手を差し伸べるのが当然なのだが、半助宅には居候している人物が一人居た
一年は組のきり丸だ。家の無いきり丸は、休日中に半助の家に居候していた
そのきり丸が問題である。一人でこなせないアルバイトを引き受けては、半助にも手伝わせる
まさかとは思うが、客人にもアルバイトを手伝わせるのではないか、と半助は心配なのだ
──きり丸ならやりかねない
だが、"きり丸のアルバイト"と"目の前の女性二人の安全"を秤に掛けると、"目の前の女性二人の安全"が勝った
「助けていただいたうえに、お家にお邪魔するなんて図々しい事出来ない──」
「…いえっ、私なら……構いませんヨ」
若干上擦る声でAの言葉を遮る。「でも……」と遠慮するAに引き攣った笑顔を向ける
「お邪魔します」
Aが口を開くよりも先に此花が半助の手を引いて答えた
──ああ、ごめんなさい、和泉先生、此花ちゃん…。どうか私を恨まないでください
自宅へ案内する途中、半助はただこれだけで頭がいっぱいだった
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つあ。(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです。ドキドキしながら読ませて頂きました！素敵な作品をありがとうございます！！ (2022年4月10日 21時) (
レス) @page32 id: 1b35df4618 (このIDを非表示/違反報告)
花太郎(プロフ) - 幼稚園並みに幼い絵を描く自分からしたら絵が上手ですね 羨ましい 漫画で好きなキャラも書けません コツとかあるの？ これからも応援していきます (2015年9月8日 21時) (レス) id: 558271d4dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：錦浦麗音 | 作成日時：2015年7月26日 23時
