鉄のハンスの呪いをとけば【Ym*In】 (ページ32)

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月ページ32

俺が言った通り、伊野尾さんが俺たちの証拠を提出することはなく、だから捕まらなかったし、相変わらず会社では、伊野尾さんと顔を合わせていた。
だけど、前みたいな関係ではない。
必要以上、話さない。関わらない。
伸ばしたくなる手を、なんとか堪えた。

そして。

「アイツ主催のマーケットが決まったぞ！！」

俺が憎む、アイツ。俺ら3人が憎む、マーケット。その両方を、同時に潰せるチャンスがやってきた。

「……行けば、伊野尾さんがいる。
潰して、アイツの面がたたなくなったら、間違いなく、俺たちは伊野尾さんに捕まる」

「もう今更じゃん、それに、俺あんな綺麗な子に捕まえられるんだったら別にいいかも」

「おい……まあ、どうせ逃げ切れても今までの絵も金もパァだしなあー……はあ、とんでもなく刺激的だよ俺の人生は」

ホントにな、と笑いあって。

家に届いた、赤い封筒を持って、家を出た。

「綺麗な月だな」

「なに感傷的になってんの、キモいぞ八乙女」

「うまくいくかな、俺ちょっと不安になってきた」

「まあ……うまくいかなかったら、それでもいいんじゃないの。一矢報いることはできるよ、何かアクションを起こせば」

3人で、だべりながら歩く。
こうして3人で集まれるのも、最後かもしれない。

そう思うと、なんだか、見上げた月が本当に綺麗に見えた。