やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ12)

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もちろん、不安になる夜もある。そんなときは図ったかのように携帯が鳴る。受話器越しの声が私のトゲトゲした心をやんわり包んでくれる。康二はそんな私に気づきながらも知らないふりをして、｢会いたいなあ｣ってちょっと鼻にかかった声で言うんだ。

一度、私が耐えきれずに電話越しに泣いたときがあった。その時の彼の言葉もよーく覚えてる。

康｢拭ってやれんくてごめんなあ。でも、おれが知らんとこで泣かんでほしいねん。泣きそうなったらこうして電話してや。｣

泣きながらいっぱいわがままを言った覚えはある。それでも、｢そうやなあ｣｢ごめんなあ｣｢おれもいつも会いたいと思ってる｣ってたくさん言ってくれて、電話越しなのに彼が優しく抱きしめてくれるような感覚だったな。いつも甘えたな康二に、たくさん甘えてしまった夜だった。
おとなだからそう簡単には泣かないけど、泣きたい時に泣く場所があることで心は解れる。

しばらく窓際に腰かけてのんびりしてたら手元のスマホが音をたてた。

康二：今仕事おわったーかえるー
康二：Aはなにしてたん？
康二：はよ会いたいなあ

通知を見て自然と笑みがこぼれる。きっと康二は優しい顔して、ちょっといじけながら打ってるんだろうな。康二は、寂しいとか会いたいとかを言うけど、言ったらますます寂しくなっちゃう人。口に出さなくてもかまってほしいのが目に見えてわかるくらい、わかりやすい人。自分が甘えてるようで、実は私を甘やかしてくれてる人。想像するだけで愛おしいなんて、私こんな人だったっけ。

康二と出会って、会いたい時に会うのがすべてじゃないって知った。外の空気を吸って空を見上げて康二のことを想って胸がじわっとあったかくなる、幸せな時間を知った。昔の私、私今すっごく幸せだから安心してね。

明日は康二に会えるから、今日はゆっくりお風呂に入って高めのパックをしよう。早く寝たらすぐ明日が来て、仕事を頑張ったら康二に会える。今から康二に会うまで、何回康二のことを考えるだろう。

あなたを思い浮かべて温もりを感じて