嘘 ページ9
「………�盒兇気鵑辰堂Ｈ�くんと付き合っているんですか？」
『………………そんなんじゃないよ』
マカロンが似合いそう。
そんな雰囲気の女の子は別の学部の子で、
わざわざ反対側の校舎まで来てこんな事を聞いてくるなんて、
それだけでこの子がどんなに横尾くんのことを好きなのかが十分伝わって来た。
「ほんと？……っ、よかったァ」
さっきまで潤ませていた瞳は心底安心した様子で可愛い笑顔を見せるその子をすごく羨ましく思ってしまった。
だってこんなに誰かを好きになって、
こんなにも真っ直ぐな想いを素直に表現できるなんて、
あたしにはもう無理だから。
心の中で彼女が羨ましくてたまらなくて、
それと同時に横尾くんがこの子を好きにならないわけがないという思いが過ぎる。
「…お友達ってことですか？�盒兇気鵑皺Ｈ�くんのこと…」
『…好きじゃないよ！』
何故かこの子に先にその言葉を言わせたくなかった。
声を張り上げたあたしをきょとんとした顔で見るその子はやっぱりどう見ても可愛かった。
『………ただの友達……何もないから、安心して』
途切れ途切れの言葉を精一杯繋いだ。
なんでか思い出すのは横尾くんの笑った顔で、
「好きだよ」という時少し視線を外すところとか、
掠れた低い声とか、
今まで何回も言われた彼の告白を思い出していた。
あたし、今どんな顔してるんだろう。
「ありがとう�盒兇気鵝∋箚萃イ襪諭�」
そう言った後、来た当初とは違う足取りで帰っていく後ろ姿をただ黙って見つめるしかなかった。
ーーーーーー
「…………なに、あれ」
りっちゃんの指差す方向には横尾くんと楽しそうに話すあの女の子。
『文学部の柏木さんだよ、可愛いよね』
なるべく嫌味のないように言ったんだけど、りっちゃんには隠し通せなかったのか心配そうに顔を覗かれた。
「……あんた言葉と表情が合ってないけど？」
『………………』
「いいの？あれ、ほっといて」
『…ほっとくも何も、あたしは関係ないから』
「ふーん……あっそ、後悔しても知らないよ」
そっぽを向くあたしにりっちゃんはわざとらしく大きな声で聞こえるように言った。
いくら気にしてないのを装っても、
目線だけはお似合いな二人を捉えてしまって、
チクリと痛む胸をそっとおさえた。
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作者名：ちゅん | 作成日時：2017年2月21日 0時
